医療行政トレンド解説 No.2 医療行政トレンド解説 No.2 (オンライン版)
1999/02/01 発行

急性期病床と慢性期病床

◎「新たな病床区分」

昨年末、厚生省が設置している医療審議会において、「医療提供体制の改革について(たたき台)」という報告書が発表された。医療保険制度抜本改革の一環として今年の国会に提出予定の、医療法等改正案のための素案だという。
この中で特に注目すべきなのが、「新たな病床区分」である。この案においては、従来の病床を急性期病床と慢性期病床に分け、各々人員配置および構造設備等の基準を示している(→表1)。

《表1》
区  分 急性期病床慢性期病床
主な人員配置基準医師         16:1

看護婦・准看護婦 2.5:1

薬剤師        70:1

医師         48:1
看護婦等
 看護婦・准看護婦 6:1
 介護職員      6:1
薬剤師        150:1
構造設備基準1患者当
病床面積
新設 6.4平方メートル以上
既設 5.0平方メートル以上
6.4平方メートル以上
廊下幅新設 1.8m以上
(両側居室 2.7m)
既設 1.2m以上
(両側居室 1.6m)
新設 1.8m以上
(両側居室 2.7m)

◎急性の条件は2.5:1

表1を見ると、急性期病床として認められるためには、入院患者数と看護要員との比率が2.5:1である必要があることが分かる。現在当院は3:1(60人の入院患者に20人の看護スタッフ)。しかも現行では2.5:1が認められるためには平均在院日数が28日以内である必要があるが、この条件が緩和されるとは思えない。(*98年1月〜12月の当院の平均在院日数は36日)
また、この急性期病床においては、在院期間の上限(概ね3ヶ月)が定められるという。
さらに構造設備基準について言うと、急性期病床においても、療養型病床群なみの患者1人あたり6.4平方メートル、廊下幅1.8mが標準との考えが出てきた。当院の場合はそれぞれ5.7平方メートル、1.6mである。

◎病床区分の背景

このような病床区分が行われる背景とは何か? そのポイントは「平均在院日数」である。
外国と比べ、日本では在院日数が長く、それが医療費を押し上げている原因と目されている。中でも平均在院日数を延ばしているのは「社会的入院」である。表2(医療モデルと生活モデル)を見て欲しい。この表でいう「生活モデル」(福祉モデルと言い換えても良い)でのケアが本来ふさわしいのに、制度の不備により「医療モデル」でのケアが行われるケースが多々あった。それによりコストが膨らみ、医療保険制度を圧迫する。病床区分はこうした矛盾の解消を目指すとされている。慢性期病床は医療モデルと生活モデルの中間形と考えていいだろう。

《表2》
医療モデル生活モデル
目 的
疾病の治癒、救命
QOL向上
目 標
健 康
自 立
主なターゲット
疾 病
障 害
主な場所
病 院
在宅、社会
チーム
医療従事者
異職種
コスト

◎発想の変革を!

われわれ医療従事者はじゅうらい基本的に「医療モデル」の仕組みの中で働いてきた。一方、慢性期病床となると、ある程度「生活モデル」の発想を持たなければならないだろう。例えば、医療モデルの“治療優先”の考えの下では「患者のわがまま」と目されてきたような患者の様々な要求は、生活モデルにおいては「受け止めるべき正当な要求」である事があり得る。
患者のアメニティ面への配慮など、特に重要である。場合によっては保険外の上積みサービスのラインアップが必要なケースも出てくる。いずれにせよ「医業はサービス業」との意識確立が求められる。そしてこうした発想の見直しは「急性期病床は無関係」と行かないのも、また当然である。
われわれ職員の、今後より一層の自覚が求められている。


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