医療業界トレンド解説 No.5 医療業界トレンド解説 No.5 (オンライン版)
2000/04/01 発行

保健・医療・福祉複合体

◎保健・医療・福祉複合体とは

「保健・医療・福祉複合体 ―― 全国調査と将来予測」(二木 立著、医学書院、1998年)の冒頭にはこう書いてある。

「保健・医療・福祉複合体」とは、単独法人または関連・系列法人とともに、医療施設(病院・診療所)となんらかの保健・福祉施設の両方を開設し、保健・医療・福祉サービスを一体的に提供しているグループであり、その大半は私的病院・診療所が設立母体となっている。
「複合体」は1990年前後に初めて登場し、その後急成長し続けている。しかも、2000年度に創設される介護保険が私的病院・診療所の「複合体」化の流れを加速することは確実である。
1989年に開始されたゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略)を契機として、「保健・医療・福祉の連携」というスローガンは、いまや一種の常套文句となっている。
本来、このスローガンは自治体など、主として公的セクター主導の文脈で語られてきた。しかも「連携」というとき、それは個々に独立した保健・医療・福祉施設間の「連携」をさしていた。

しかし他方、1990年頃から、全国各地で私的医療機関の開設者が老人保健施設や特別養護老人ホーム、訪問看護ステーション、在宅介護支援センターやケアハウス等々を開設して、保健・医療・福祉サービスを同一法人(または関連・系列法人)内で“自己完結的に”提供する動きが生まれている。わが医療法人**会も基本的にそうした路線を歩んでいる。

上掲書の著者である二木氏によれば、こうした「複合体」は、各地域での公的セクター主導の「保健・医療・福祉の連携」を補完するものにもなりえるが、逆にその障害物となる危険性も持っていると指摘している。
こうした中、地域社会に対するわれわれ**会の今後のスタンスをつくり上げていくためにも、「複合体」の“光と影”について、冷静に評価していく必要があるだろう(以下、出典はすべて上掲書による)。

◎「複合体」化の実態

「複合体」化の実態について、いくつかの表によって見てみる。

1:保健・福祉施設全体に占める私的医療機関母体施設の割合(1996年)

施設種類施設総数
(公立を含む)
(A)
私的医療機関
が母体の施設
(B)

(B/A)

老人保健施設1,5711,33484.9
特別養護老人ホーム3,4581,06330.7
ケアハウス45013329.6
有料老人ホーム2755821.1
在宅介護支援センター2,17996944.5

2:病院の「複合体」化の進展度 ―― 老健・特養開設パターン(1996年)

病院開設者実数
総数両者なし老健
のみ
特養
のみ
老健

特養
両者なし老健
のみ
特養
のみ
老健

特養
公益法人31526321121983.56.73.86.0
医療法人4,3673,36060220520076.913.84.74.6
個  人1,8751,77318671794.61.03.60.9

3:500床以上の病院/病院チェーンの「複合体」化進展度

 実数/グループ数
総数両者なし老健
のみ
特養
のみ
老健

特養
両者なし老健
のみ
特養
のみ
老健

特養
総   数89402352144.925.85.623.6
病院チェーン3812921531.623.75.339.5
単独病院5128143654.927.55.911.8

大規模な病院チェーンで、「複合体」化がとりわけ進行しているのが見てとれる。

◎「複合体」の光と影

二木氏が指摘している「複合体」の光と影とは、以下のようなものである。

1.人材の活用と育成・配置の効率化
2.運営コストの削減
3.各施設を通して得られる利用者情報の蓄積と活用
4.顧客に対するブランドイメージ形成によるアピール効果

※ こうした点を見ると、介護保険が「複合体」に非常に有利に働くことが予想できる。

1.利用者のいわゆる「囲い込み」
2.医療ケア優先による生活ケアの軽視
3.利用者でなく施設の利益中心の運営
4.政治家や行政との「癒着」、補助金ころがし等

「複合体」はややもすると、上の「影」の例のような方向へ転落してしまいがちなので、事業者やそこで勤務するスタッフとしてもそのことを自覚し、利用者本位の姿勢を強く持つべきだろう。


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