◎保健・医療・福祉複合体とは
「保健・医療・福祉複合体 ―― 全国調査と将来予測」(二木 立著、医学書院、1998年)の冒頭にはこう書いてある。
「保健・医療・福祉複合体」とは、単独法人または関連・系列法人とともに、医療施設(病院・診療所)となんらかの保健・福祉施設の両方を開設し、保健・医療・福祉サービスを一体的に提供しているグループであり、その大半は私的病院・診療所が設立母体となっている。1989年に開始されたゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略)を契機として、「保健・医療・福祉の連携」というスローガンは、いまや一種の常套文句となっている。
「複合体」は1990年前後に初めて登場し、その後急成長し続けている。しかも、2000年度に創設される介護保険が私的病院・診療所の「複合体」化の流れを加速することは確実である。
しかし他方、1990年頃から、全国各地で私的医療機関の開設者が老人保健施設や特別養護老人ホーム、訪問看護ステーション、在宅介護支援センターやケアハウス等々を開設して、保健・医療・福祉サービスを同一法人(または関連・系列法人)内で“自己完結的に”提供する動きが生まれている。わが医療法人**会も基本的にそうした路線を歩んでいる。
上掲書の著者である二木氏によれば、こうした「複合体」は、各地域での公的セクター主導の「保健・医療・福祉の連携」を補完するものにもなりえるが、逆にその障害物となる危険性も持っていると指摘している。
こうした中、地域社会に対するわれわれ**会の今後のスタンスをつくり上げていくためにも、「複合体」の“光と影”について、冷静に評価していく必要があるだろう(以下、出典はすべて上掲書による)。
◎「複合体」化の実態
「複合体」化の実態について、いくつかの表によって見てみる。
1:保健・福祉施設全体に占める私的医療機関母体施設の割合(1996年)大規模な病院チェーンで、「複合体」化がとりわけ進行しているのが見てとれる。
施設種類 施設総数
(公立を含む)
(A)私的医療機関
が母体の施設
(B)% (B/A)
老人保健施設 1,571 1,334 84.9 特別養護老人ホーム 3,458 1,063 30.7 ケアハウス 450 133 29.6 有料老人ホーム 275 58 21.1 在宅介護支援センター 2,179 969 44.5 2:病院の「複合体」化の進展度 ―― 老健・特養開設パターン(1996年)
病院開設者 実数 % 総数 両者なし 老健
のみ特養
のみ老健
+
特養両者なし 老健
のみ特養
のみ老健
+
特養公益法人 315 263 21 12 19 83.5 6.7 3.8 6.0 医療法人 4,367 3,360 602 205 200 76.9 13.8 4.7 4.6 個 人 1,875 1,773 18 67 17 94.6 1.0 3.6 0.9 3:500床以上の病院/病院チェーンの「複合体」化進展度
実数/グループ数 % 総数 両者なし 老健
のみ特養
のみ老健
+
特養両者なし 老健
のみ特養
のみ老健
+
特養総 数 89 40 23 5 21 44.9 25.8 5.6 23.6 病院チェーン 38 12 9 2 15 31.6 23.7 5.3 39.5 単独病院 51 28 14 3 6 54.9 27.5 5.9 11.8
◎「複合体」の光と影
二木氏が指摘している「複合体」の光と影とは、以下のようなものである。
| 光 | 1. | 人材の活用と育成・配置の効率化 |
|---|---|---|
| 2. | 運営コストの削減 | |
| 3. | 各施設を通して得られる利用者情報の蓄積と活用 | |
| 4. | 顧客に対するブランドイメージ形成によるアピール効果 |
| 影 | 1. | 利用者のいわゆる「囲い込み」 |
|---|---|---|
| 2. | 医療ケア優先による生活ケアの軽視 | |
| 3. | 利用者でなく施設の利益中心の運営 | |
| 4. | 政治家や行政との「癒着」、補助金ころがし等 |
「複合体」はややもすると、上の「影」の例のような方向へ転落してしまいがちなので、事業者やそこで勤務するスタッフとしてもそのことを自覚し、利用者本位の姿勢を強く持つべきだろう。
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