◎近づく2000年改訂(10月実施分)
前回(1998年)の診療報酬改訂においては、一般病棟における老人の長期入院に対する制限強化が打ち出された( → 参考:老人長期入院是正策)。これは「医療のムダ」の典型たる社会的入院を解消するための対策の一環なのだが、他方でこの制限強化は、病院からのいわゆる「老人追い出し」をまねき、一部で社会問題として注目されることとなった。
本年の診療報酬改訂では、こうした「老人追い出し」の批判に応えるかたちで、入院期間制限の一定の緩和策がとられている。しかし、今改訂には、老人追い出し傾向を緩和するどころか、逆に促進しているのだという、まったく正反対の評価もある。そして、その入院期間制限が強化されるという方の面が効力を発揮しだすのは、実はこの10月からのことなのである。
入院期間制限の強化面を理解するために、まず用語について整理する必要がある( → 図1)。

図中にある「特定患者」「基本料算定患者」は、共に今年の診療報酬改訂で初めて作られた“新語”である。昨年度まで、この特定患者に対応する患者は「特定長期入院患者」と呼ばれていた。特定長期入院患者とは、一般病棟に6ヶ月を超えて入院している老人患者(一部の重症者を除く)のことで、老人患者は一般病棟での入院が6ヶ月を超え、特定長期入院患者となると、途端に大幅に点数(=看護料)が下げられた。
一方、今年の改訂により特定患者となるのは、一般病棟での入院が90日を超えた老人患者。従来の6ヶ月と比べると、半分の期間である。実は、この90日というのは、今年の9月末までは、経過措置として180日と読みかえて運用することになっているのだが、10月からいよいよ規定どおりの90日で運用が始まるのだ。
しかも、特定患者となると、点数(=入院基本料)のダウンに加え、投薬、注射、検査、そして一部の処置がこの入院基本料にマルメられてしまう。当院での試算によれば、これらによる減算をあわせると、老人患者が入院日数90日を超え、特定患者となる時に、当院の場合だと患者1人1日あたり約5,600円、収入が下がることになる。
◎入院期間制限の“緩和面”
だが一方、厚生省がうたっている通り、制限が緩和された面もある。
1つには逓減制の緩和。
昨年度までは患者の入院期間が延びるにつれ、2週間>1ヶ月>2ヶ月>3ヶ月>6ヶ月 と点数が下がっていったのだが、今年(4月)からは、2週間>1ヶ月>6ヶ月 とキザミが減った。
もう1つは除外要件の増加。
老人患者が一般病棟に90日を超えて入院しても、患者が表1に示した状態にあれば、特定患者にはならず基本料算定患者となり、入院料のダウンも小さく、投薬、注射などのマルメもなくて済む。昨年度までの場合でも同様に、患者が表2の状態なら特定長期入院患者とはならなかったのであるが、表1を表2と比べてみると、随分とその定める“状態”が増えているのが分かる。このあたりが「老人追い出し」批判への対応として読みとれる。
◎入院機能分化の促進
で、今回の改訂は結局のところ何だったのかと言うと、それは医療必要度の高い老人患者を入院期間のみで一律に追い出すような点数設定には改善を加えたけれども、医療必要度が相対的に低い老人患者については、90日(以前は6ヶ月)を超えると、もはや一般病棟への入院は続けられなくなるよ、ということなのだ。少なくとも一般病棟においては、長期にわたる老人の社会的入院が生き残る余地は、これによりほとんど消失したといって良いだろう。
表1:特定患者とならない状態 難病患者 重症者を対象とした特定の個室(含、2人部屋)に入室している患者 重度の肢体不自由、重度の意識障害等 悪性新生物に対する特定の治療を実施している状態 観血的動脈圧測定を実施している状態 理学療法(複雑)または作業療法(複雑)を実施している状態 ドレーン法、胸腔洗浄、腹腔洗浄を実施している状態 頻回に喀痰吸引を実施している状態 人工呼吸器を使用している状態 人工腎臓等を実施している状態 全身麻酔等による手術実施後30日以内の状態
表2:特定長期入院患者とならない状態 観血的動脈圧測定を実施している状態 悪性新生物に対する特定の治療を実施している状態 ドレーン法、胸腔洗浄、腹腔洗浄を実施している状態 人工呼吸器を使用している状態 人工腎臓等を実施している状態
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