平成20年度研究会

 第1回研究会    
平成20年6月21日(土)
会場  高松中央卸売市場管理事務所
内容 1. 総会
    2. 講演 「食と健康」 
           管理栄養士 赤井靖子氏
    3. 「食と健康」アンケート報告
       香川県立笠田高等学校 犬飼直美氏
       豊中町学校給食センター 白川恵美子氏
    4. フリートーク
       司会 食生活改善推進連協議会 高嶋タカ子氏
会報「香川の食」第5号発刊
講演内容「食と健康
〜 正しい食生活で健康に〜
 日本人の平均寿命も健康寿命も世界トップレベルであるが、最後の6〜7年は要介護状態になっているのが私たちの平均的な姿である。
人生50年といわれたのが昭和22年であり、平均寿命が低迷していた頃の食事は食品の多様性もなく90%は炭水化物に依存、栄養状態はよくなかった。
昭和40年頃から日本の食生活も徐々に豊かになり、昭和45年の万国博覧会を機に外国から畜産物や油脂類の輸入も増えて、昭和55年には従来の米を中心とした食生活に加え適度な日本型の食生活が実現してきた。平均寿命を延ばしてきた理由として様々の要因があげられるが動物性のたんぱく質と脂質の摂取が増えてきたことが大きい。
 現在では飽食と言われ、何でも好きな物が好きなときに食べられるようになってきている。 近年の食関係の変化としては都市化、核家族化、勤労女性の増加、外食産業や食品産業の発展があげられ、また、家庭では朝食欠食、食事作りの軽視、食の簡便化や若い女性のダイエット指向などが進み栄養摂取に偏りが生じてきている。
エネルギーの過剰摂取、脂肪、特に動物性の脂肪が多く、食塩の取りすぎ、野菜の不足(繊維不足)などが指摘され、また、個々人のライフスタイルも多様化し、夕食偏重等きたし、生活のリズムや食生活が乱れている。運動不足も加わって肥満者が年々増加、生活習慣病が増えてきている。普段、食事相談をしていて思うことは病気は起こるべきして起こり、病気を招くだけの原因は必ずあるように思う。
 厚生労働省の資料(国民栄養調査平成11年)によれば適切な食品選択や食事準備の為に必要な知識・技術があるとする者は男性で約3割、女性で5割しかいない。食に関する情報が氾濫し、料理をする機会の減少とあいまって、正しい情報を適切に選択して活用することが難しく、健全な食生活を送るために欠かすことができない知識や判断力が低下しているということである。
 平成12年度から第3次国民健康づくり「健康日本21」が策定され、一次予防に重点をおいた健康作りが勧められている。これに連動し、厚生労働省、文部科学省、農林水産省の3省が連携して新しい「食生活指針」が作られ、実践のための取り組むべき内容を示している。
また、専門知識がなくても「何を」「どれらけ」食べればいいのか食事の基本を身につけるため望ましい食事のとりかたやおおよその量を誰にでもわかりやすくイラストで示した「食事バランスガイド」も活用が始まっている。
 食生活を見直し、正しい食事の実践で一人でも多くの人が健康になって欲しいと思う。

平成20年度第2回研究会

 研究会の2日前に通過した台風は県内にゲリラ豪雨を降らせ、早明浦ダムに貯水率4%の水をやっと蓄えて第4次取水制限を延期させた。
 雨に洗われた空は青く澄みわたり陽光が真夏並みの強さであった。頭を垂れた稲穂が広がる田園に「帯包しいたけ園」の2棟のビニールハウスがきらきらと太陽を反射していた。
参加者36名は2班に分かれて研修を受けた。
1 目的  しいたけについて研究を行う
2 会場  帯包しいたけ園(高松市国分寺町新名  tel  090−3789−8109 )
3 日時  平成20年9月20日(土)10:00〜12:20

4 研修内容

1 講師紹介 しいたけの菌床栽培 帯包洋子氏
25年前に会社を脱サラしたご主人とまったく経験のなかった原木しいたけ
栽培を始め常識にとらわれない収穫や出荷方法を工夫して続けてきた。
15年前に林業衰退のあおりで原木の入手が困難になり菌床栽培に切り替えた。
小粒のしいたけが評判がよく香川県加工食品共進会で受賞したことが励みになってクッキー等の加工品も工夫して作り「安全・安心な手作り自慢」のブランドで販売している。年間約6万菌床で生しいたけを栽培して、生と乾燥を50%ずつ生産している。
2 実習    しいたけクッキー   しいたけをふんだんに使った健康食クッキー
材料
しいたけ粉 100g  小麦粉 1kg  マーガリン 700g
卵 6個         砂糖  700g 
@マーガリンを湯煎にして、卵を入れて混ぜる
A小麦粉、しいたけ粉をふるいにかけて砂糖を入れて混ぜる
B@とAを混ぜて1時間冷蔵庫でねかせる。
Cゴムべらを使ってBをラップに小分けして入れ形を棒状に調える。
DCを1cm位の厚さに切ってオープンで焼く。
しいたけ粉100gは干ししいたけ1kgを機械で粉砕している。みそ汁、離乳食、老人食に使うとよい。

 クッキーは加工食品共進会で受賞した。「おいしいと言ってくれるのがはげみです」と語る帯包さんは溌剌とし
   て若々しい。しいたけのエキスが若返らせるだけでなく目標を持って仕事に打ち込んでいるからなのだろう。
   「食を考える会」ではこのように溌剌とした美しさをもった女性と出会うことができるのもこの会の魅力と
   楽しみである。
   クッキーはしいたけ特有の臭いがなく、さっぱりとして香ばしく高級感があり、これは売れると思った。

3 見学
  原料の広葉樹のチップに栄養(コーン、米ぬか、鶏や牛の肥料)を混ぜて攪拌する。これをコンベアーに
  上げて成形機で床を作る。さらに釜で105℃で蒸気殺菌をして発砲ウレタンビニールに入れしいたけ菌を
  植え付ける。18℃〜24℃の完全空調設備の整ったハウスで4ヶ月から6ヶ月栽培する。
  農薬を一切使わず安心して食べられるしいたけ栽培をしている。

棚に並べられた菌床に勢いよく何本ものしいたけが逞しく生えていることに感じ入った。それにも増して
 帯包さんの息子さんがしいたけの研究に熱心に取り組み、しっかりと地元に根をおろし地場産業の発展に
 力を入れていることに若者の逞しさを感じた。また、中国の食の安全が危惧されている昨今であるが、
 安全な食品を作ろうとしている生産者の努力を知ることができた研究会であった。
  

3.第3回研究会

実施内容
(1)日時平成20年11月9日(日)開場11:30〜13:30
(2)場所高松市中央卸売市場管理事務所5F会議室
(3)日程シンポジウム 11:45〜13:15
テーマ      「今、香川の食は  〜野菜を食べよう〜」
司会         寒川昌彦氏   香川県水産振興協会 事務局長
パネリスト     池本和子氏 太田潔子氏 福留  均氏 
            山本恵美子氏 
コーディネーター 宮城公子氏   香川の食を考える会 会長 
1 池本和子氏  香川県食生活改善推進連絡協議会 会長 私たちの取り組み
  香川県食生活改善推進協議会は今年で30周年を迎える。17市町村の協議会、4500名の会員がいる。      
  正しい知識や望ましい食習慣を身につけるために地域のニーズに合わせて進めている。子供から高齢者       
  まで全世帯を対象に”健やか香川21ヘルスプラン”を展開している。活動内容は         
  1.現状把握・・・・@野菜の摂取不足、A朝食の欠食・孤食の増加、B子供成人の肥満、
             C郷土食文化の希薄   
  2.食育活動    「朝ご飯・野菜大好き、一皿増やそう野菜」をテーマにメンバー4500人で活動している。
              子供や若い世代への浸透を特に期待している。
  3.栄養、食事バランスガイド
2 太田潔子氏  食と農のソムリエ、食育プランナー 楽しい野菜作り
  庵治の石屋さんに嫁ぎ28年。義父母の後を継いで田畑で減農薬、有機肥料にこだわって安心安全な野菜を
  作っている。多くの人が家庭菜園をして安全な野菜を作り収穫の喜びを味わってもらえる活動をしてゆきたい。
  自分が育てた野菜を大切に楽しく食べる料理教室を開いて地域のコミュニケーションの場を作り食育の大切さ
  を伝えたい。愛情のない食卓で、たとえ満腹になっても心の飢えは満たされない。食事は単なる栄養摂取の
  手段ではなく大切な心の栄養源である。昔は祖母や母が作った食事を家族団らんで楽しく食べる中で子供の
  心も育っていった。心を失ったような事件を起こす子供が増えている昨今、食育の大切さを痛感し
  「食と農のソムリエ」 「食育プランナー」を取得した。
    
3 福留  均氏  (社)農山漁村文化協会 中国・四国支部支部長  農村を歩いて考えること
  年初めの中国ギョーザ事件に始まり、最近の事故米に至るまで食をめぐる事件がこれほど多発した年は
  ありません。
  生産現場では原油価格高騰により経営を圧迫しているがまだ価格添加されていない。
  アメリカでは「ファイブ ア デイ」「5 grips 運動」が効を奏して野菜・果物の消費が20%伸びた。日本でも
  全国4都市において食事バランスガイド推進事業に取り組んでいる。バランスのとれた食事の原型は当会が
  発行した「日本の食生活全集」にある。佐世保の小学校で生ゴミから堆肥を作り学校農園で野菜を作った
  ところ野菜嫌いだった子供が自分で作った野菜を食べるようになった。低体温児童の問題は子供のSOS
  として見過ごせないことでありデータ作りが急がれる問題である。 米所では野菜の摂取量が多い。食の
  背景には個別の食文化がある。地域の物を評価しておいしく食べる調理方法を伝承して生活文化ともいえる
  生き方を評価する時期に来ている。西日本新聞に掲載された「食卓の向こう側」に詳しく掲載。 
  http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/shoku/ (西日本新聞、食卓の向こう側URL)にリンク
4 山本恵美子氏 高等学校教員
料理が出来ない高校生がたくさんいることに驚いた。炊飯器でごはんが炊けない、卵を割れない、
玉葱をどこまでむくのか分からない。彼らは自立したとき何を食べていくのだろう。私は大学生になってコンビニ弁当を食べていたが食べたいと思える物がほとんどなくなった。子供の頃食べていた季節の野菜は毎日食べても飽きずにおいしく食べられる。食習慣は、幼い頃食べてきた食事によって作られる。本当に食育が必要なのは、これから食生活を作っていく若い人、子供を育てている親たちであり、食に携わる仕事をしている企業であり人ではない か。調理実習の時間だけ楽しい、おいしいという実習に終わらせることなく地元の野菜を使った料理、旬の野菜をおいしく食べる実習にしていきたい。 
参加者の意見
・香川県食生活改善推進協議会は幅広い年齢層に食育を行っているが、これからは子供や若い世代へのきめ細かい食育にさらに力を入れたい。

・うどん研究会では、飯山町の子供会で小麦の種まきをして育て、それを使ったうどん教室を10年前から行っている。
 小麦の成育、小麦から粉になる過程、粉の主成分はデンプン質とたんぱく質でありうどんの粘りはたんぱく質のグルテン が関係していることなどを子供達は体験を通して知ることができる。今後も、さぬきうどん文化を継承していきたい。

・小豆島からの参加。保育所の調理員をしていた。3歳児から食材の名前を教えたり野菜を育てることをしてきた。
 ピーマンが嫌いだという子供でも自分が栽培して収穫したものは喜んで食べる。これからは地産地消の食育ボランティア の活動をしていきたい。

・それぞれの方の食への取り組みはすごい。いろいろな食問題の発表があったが、これらはすべて自分自身の問題でもある。よりよい食生活への努力をしたい。周囲にも広めたい。

・生きる知恵をもって日々に年を重ねたい。いろいろな活動に参加し多くの人に出会え、特に食のいろいろの意見を聞くことは楽しい。健康で生き生きとしゃべれるおばあちゃんになりたい。

・看護師をしている人から最近の母親の母乳に油が浮いているとの現実を知らされて驚いた。母親の食事内容が乳幼児に影響する。この事実を若い母親達が自分の目で確かめて関心を持たなければいけない。

・夫が糖尿病になり野菜を中心にした食事に変えたところ検査数値が安定した。

・昨年子供が生まれた。子供の健康な成長を第一とした食事を意識している。

・飽食の時代、個食やファーストフード過剰が問題になる時代である。食の原点は家庭であり子供の成長には親の手作り料理が一番である。

・栄養職員を定年退職したが、食育には野菜の手作りが重要であると以前から思っていたので、今は香川農業大学校で野菜作りを学んでいる。

・野菜たっぷりの調理で日々の楽しみが増す。新鮮な地元野菜を食べられる食の流通を考えなければいけない。

・食育のキーワードは「本当のおいしさ」ではないだろうか。そこには安全・安心がある。
宮城コーディネーター
  私達人間は宇宙の摂理、地球の営みの中で生かされているので、その土地の季節の野菜を十分に摂取すること が、健康維持のポイントである。自らの栽培や料理、家で囲む食卓から「たのしい」「うれしい」「おいしい」の感動が生まれる。このことが心身の健康につながるといえる。
 時間の都合で、パネリストと参加者の意見交換が十分に出来なかったのは残念であるが、ここに集う方々の様々な食への思いを語り合え、今後の食生活への示唆を相互に受けることができた。シンポジウムの冊子には、季節の野菜を使った香川の郷土料理のレシビや香川県の野菜の摂取量の資料を掲載しているので参考にして欲しい。

http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/index.html (農林水産省 食事バランスガイド)

http://gojiman.jp/      (高松市農産物ごじまん品)

 

平成20年第4回研究会報告

目的 オリーブを活用した料理の研修を行う
会場 香川県漁連センター2F 会議室・調理実習室(高松市北浜町2番地)
日時 平成20年12月6日(土)9:30〜13:00
日程 9:00〜9:30 受付
9:30〜9:40 オリエンテーション
9:40〜12:55 講義と調理実習
オリーブを使った新郷土料理 
    ジュヌヴィエーヌ料理教室代表
    山中 仁氏  山中 美紀子氏

12月に入っても暖かい日が続き、アメリカ楓が太陽を透かして真っ赤な色に染まり街路を飾っていた。
それが研究会当日になると、前日に訪れた今年一番の寒気に葉が振り落とされ丸裸になった木を曇天
に晒していた。まさに木枯らしの季節到来の初日であった。
寒さをものともしない会員達が海沿いにある漁連センターの調理室に集まり「オリーブを使った和風料理」を楽しんだ。

1、オリーブの煮しめ
材料分量(6人分)
  オリーブの新漬 カップ1 、鶏もも肉 1枚、大根 1/4本、にんじん1/2本、
  こんにゃく 1/2枚、里芋 3個、しいたけ 3枚
  昆布 5cm角1枚、砂糖大さじ1、 酒大さじ1、 みりん大さじ2 、薄口醤油大さじ3 
つくり方
  @新漬オリーブは(種をとり)塩抜きしておく。鶏もも肉は脂身を取り、一口大に切って酒と塩少々を
   まぶしておく。野菜は食べやすく切って下ごしらえをしておく。
  A水カップ2に昆布をつけておく。
  BAに大根、にんじん、こんにゃくを入れて沸かしアクを取って調味料を入れる。
  CBに鶏肉を加えてアクをとり、しいたけ、里芋、オリーブを加えて煮る。
   味を調えて火を止め、味を含ませる。
   
2,オリーブ漬け
  塩漬けオリーブの塩を抜き、味噌に漬けて2から3日おく。
  同様にぬかに漬けておく。
  

3,オリーブ詰めのみそ汁
材料分量(6人分)
  オリーブの新漬 18粒 、煮干し 12匹、すり身 20g、タマネギ 1/2個 じゃがいも 1個、
  味噌 大さじ4、細ねぎ 2本 
つくり方
  @煮干しは掃除して水に漬けてしばらくおく。
  Aタマネギとじゃが芋の薄切りを加えてわかし、アクをとる。
  B塩漬けオリーブは種を抜いて、いったんゆでこぼす。すり身を詰めてAに入れる。
  CBに味噌を溶いて仕上げ、細ねぎの小口切りを添える。

4,オリーブあんの蒸し菓子
材料分量(約12個分)
  薄力粉 250g、ベーキングパウダー 10g、タンサン 小さじ1/2、砂糖 125g、塩 ひとつまみ
  牛乳 250cc 、オリーブ油 大さじ1、 あんこ120g、 オリーブの新漬け 少々 
つくり方
  @生地の材料をボールに合わせて混ぜ、くぼみを作る。真ん中に牛乳をすこしずつ流し込みながら
   混ぜ、最後にオリーブ油を加える。
  Aあんこに刻んだオリーブを加え、あん玉に丸める。。
  B型に生地、オリーブあん、生地の順に入れ、蒸し器で15分蒸す。