私の回想録
第4回    からすの赤ちゃん
からすは昔から、あまり人には良く思われていませんが実際にはとて

も利口で人にも大変よくなついてかわいい
鳥なのです。
    
    遠い昔の話になりますが小学6年生の頃の事でした。
   友達と相談してからすの巣を採ろうと言うことになり準備にかかりました、
   からすの巣を見つけるのは簡単です、と言ってもこれにこつが要ります、
   
   まず からすの行動を監視するのです、

     春が来ると鳥たちは巣作りを始めます、

     からすの行動を見ているとまず巣を作る材料をくちばしにくわえて運び
 
     始めるのです、

   これの観察から始まるのですが見ていることを からすに知られると 

   からすは巣の場所を変えてしまいます、
それで  見てみぬふりをする

   わけなのです、
   又 からすはなかなか利口な鳥で直接巣のある場所へは絶対行かない

   のです、 
   少しはなれたところへとまり  見えないように木の下をくぐって
   巣のところへ行くのです、
   だが 山の子供たちには それくらいの事は 一般常識なのである、
   巣作りが終わりしばらくすると ひながかえりやがてえさを運び始めます

   そして数日が過ぎたころが 汐ときなのです、
   さつそく行動に移ったのでした、
学校から帰ると3人ではしご とロープ と目かごを持って山へ行くの

ですが からすは相当高い木の上でないと巣をしないこと
を大人達も

よく知っています、 

大変危険な作業なのだが、  
気をつけてな、 とは言ってもなぜか 

あぶないからやめろ 
とは言いませんでした、
   巣は簡単に見つかりました、
    
大きな木なので一番下の枝まではしご を掛け一人がロープを
腰に結

んで登り、一人は木の下で待機  もう一人も登り二人がか
で巣を目

かごに入れ、ロープでつり降ろしたのです、
   ちょうど3匹おり三人で一匹ずつ分けて持ち帰り毎日餌をやって

   飼ったのでした、
2〜3日たつと 気が付いた からすの親が屋根上に来て飛び回るが

からすの赤ちゃん  全く知らん顔で私たちに餌を
ねだるのである、
  
最初は箱で飼育していたのですが
大きくなるにつれて ほとんど放し

飼いになりました、
最初来ていた親鳥もあきらめたのか、安心したのか そのうちに来なく

なりました、
からすの赤ちゃんはすこしずつ羽根も伸びて成長して行きます、
   私のところへ来たからすは実ににぎやかで愛敬があるのです、
    学校から帰るとそれを見つけて羽根を半分くらい広げて、
ガア ガア ガア  と飛ぶように走り寄って来て足元まで来ると上に

向って ガア ガア と餌をねだるのである、
かばんを家に放り込んで吊竿を持って前の川に行くと小走りについて

きて釣れた魚を喜んで食べるのでした、
   人を本当に自分の親と思い込んでいるのでした、
私が家にいるときはいつもそばに来て遊び からすと言えども本当に

かわいいものである。
   
やがて数ヶ月が過ぎ、からすも一人前になりましたが  しかし
 いつ

までもからすを飼うわけには行かなくなりました、
やがて中学校であるし汽車通にもなるし、かわいそうだが山へ帰して

やろうと言うことになり 友達と少し離れた山へ
連れて行きはなしてや

ったのです。
山へ帰してやった安堵感と友達を失った時のような寂しさとが重なりそ

のまま後ろも見ずに一目散に家まで走って帰り
ました、
   ところがからすには羽根があることを忘れていたのでした、
   家に帰るとからすは先に帰っていてガア ガア ガアと再び寄って

  来るのである、
   
そこでむごい仕打ちとは思ったのだが 心を鬼にして餌をやらなくした

のです、
それでもしばらくの間は来ていたのですがやがて独り立ち

して行ったのか来なくなりました、
   そして数日が過ぎました、  そんなある日父が山の手入れに行った

   時の事です、
   昼弁当を食べているときそのからすがやってきたのです、
   弁当を分けてもらって喜んで食べて帰って行ったのです。
   父も翌日からからすの弁当を余分に持って行ってやるようになりました、
   からすもいつのまにか一人前に成長していたのでした。
   このときから 私の からすに対するイメージが大きく変わりました

 

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