私の回想録
      第40回  鉱石ラジオ
 昭和29年頃の事です、小学校5年生のときでした、
その頃は今と違っていろんな模型の教材がありました、
模型ヒコーキ、グライダー、モーター、ベル、モーターボート、と工作好きな

私にとってはたまらない魅力でした、
そのすべてを一つずつ作ったのでした、
学校の授業の中にも工作と言う時間がありそういったものを作りました、
私の得意の時間でした、
模型ヒコーキを作り学校の運動場で飛ばしたり、グライダーを前の山の頂上

から飛ばしてみたりモーターボートを川へ浮かべてみたり 夢中に
なったもの

でした、
特に気に入ったのが電気関係の工作でした、
モーター、ベル、等を作ったのですが一番の負担になったのが乾電池でした、

当時にしてはかなり高価だったのです、
其処で考えたのがトランスでした、

トランスがあると電灯線からいくら
でも電源を取り入れることが出来て乾電池を

買わなくても済むのです、
しかし高価なトランスを買ってはくれません、仕方なく作ってみることにしました、

古い鉄心とエナメル線を集めてきていろいろ試行錯誤のすえ
やっと最初の製品

が出来たのです、
早速職員室で担任の先生に協力してもらってテストをしたのです、
しかしスイッチを入れると同時にブーと大きな音がして発熱し 熱を下げる為に

油の中に入れて 再度挑戦したのですがエナメル線が焼
き切れて見事失敗に

終わりました、
後で考えたのですが巻数が少なかったのです、今度はかなりの時間をかけて

鉄心に5000回くらい線を巻きました、
100ボルト側と二次側のエナメル線の巻数を100対3にすれば3ボルトが出て

くるのです、1次側が5000回ですと2次側は150回でいいのですが
だいぶ太い線を

巻くのです、
そうすると2次側のアンペアが大きくなるのでした、
その結果3ボルトの電源を作ることに見事成功したのです、
私にとって子供心にも大きな自信がついたのでした、
それから後は乾電池を買うことがなくなりました、
その頃鉱石ラジオと言う組み立てキットがあったのです、
簡単な同調回路に鉱石検波器を付けただけのラジオでクリスタルイヤホーン

がついていました、
そんなに高価なものではありませんでした、早速購入したのです、
配線図通り組立ててみたのですが ものを言いません、
放送局に近い所ですと言うのですが私の所は40〜50km離れているため電波

が弱く受信できないのです、
ある日 山の上が電波が強いと言うことで電線とラジオを持って前の海抜350m

の山上まで行ったのですがやはりだめでした、
それから1年くらいが過ぎました、そんなある日一つの本の記事に目が止まった

のです、
鉱石検波器の代わりにゲルマニウムダイオードであれば電波が弱くても

受信できると言う記事があったのです、
早速これを購入して鉱石検波器と取り替えてみると その通りでした、
やがてラジオはものを言うようになりました、アンテナは電灯線の片方を容量の

小さいコンデンサーを入れてこれ利用するととても感度が
良く毎晩のようにその

ラジオを聞いたものでした、
家庭用の電灯線は非常に良いアンテナになったの

です、
これが私のラジオ少年の始まりになったのでした、
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