小学校4〜5年生の頃だった
と思います、
近くの海岸にクジラが漂着して
いると言う話が聞こえてきました、

私の村から東へ山を越して行く
外牟井(とのむい)と言う海岸
なのです、

海へはよく行くのですが いつも
南の山を越して行く海岸ばかりで
東へは行った事がありません、

しかし子供達で今度の日曜日に
見に行こうか と言う話になった
のです、
しかし距離にして5kmくらいは
充分にあります、
道も普段通る道ではないので通れるかどうかわかりません、
さらに途中 はるヶ淵と言う所あり 危険な崖と淵があり
昔 はると言う人が落ちて亡くなった事からそういう名前が
付いたそうなのです、

次の日曜日 10名くらいの子供達ばかりで弁当を持って
出かけたのでした、
私 今になって思うのですが 今の親達であれば絶対に
行かせないと思うのですが 当時の親達はやめろとは言わ
ないのです、
それは我が家だけでなく よその子供達も弁当を作ってもらい
集まってくるのでした、

小さな山を越え さらに谷川に沿った山道を下って行くのです
 
人が全く通らない道なので草が生い茂り思うようには
進まないのです、

やがて問題のはるヶ淵まで来ました、
ここでは上級生が親代わりなのです、
気を付けろよ、、、
みんな弁当を背中に縛って崖っぷちを四つんばいんなり
渡るのです、
何とか 全員無事に渡り さらに下流へと進んで行きました、
しばらく行くと 道も開けてきて海が見え出すと 誰からともなく
走り出したのでした、
海岸に近いところには田んぼもあり家も1軒ありました、
当時は船が大切な交通機関で 船でここの人たちは町へ
行き来していたのです、

海岸に着くと湾の中に大きな黒い物体が浮かんでいました、
だいぶ日が経っているため腐敗が進んで原型は確認できま
せんでしたが クジラを見たことで子供達は納得したのです、
砂浜で一同遠足気分で弁当を広げました、
満足な弁当ではありませんがこうしたところで食べる弁当の
味はとてもうまいものでした、

海岸で少し遊びましたが 急がないと5キロの山道を戻らな
ければならないし 冬の日は短いのです、
夕方近くまでかかり無事私達の村まで帰ったのでした、

それから10数年が過ぎました、
その海岸にも立派な観光道路が付きました、

防波堤も出来 すっかり様子が変わりましたが 海岸の風景
は今もクジラを見に行った時と全く変わらないのです、
時々その海岸に行くたびに当時のことを懐かしく
思い出します、


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外牟井海岸

私の回想録

第12回 クジラの見学