私の回想録
     第37回   野生の猿
ある日のことです、近所の子供が おっちゃん あれみてみー
と言うのでふり返ると 隣の家の二階のベランダに5〜6匹の猿が走り回って

いるのです、
家のかぎをしておかなければ泥棒よりも猿に入られるのです、
昔はこの地域に猿などまったくいなかったのですが最近は相当の猿がやってくる

ようになりました、
数年まえの事ですが家の裏山へ山仕事の人が来ていたのです、
盆休みに3日間ほど道具をビニールで包み縛って山へ置いて帰りました、 

盆が終わり再び山へやってくると猿がその包みを開け
て道具を引っ張りだして

いたのです、
そしていくら探しても のこぎり だけはないのでした、
秋が来るとこの猿たちが田んぼへ出てきて稲を荒すのです、
多いときには40〜50匹がやってくるものですから小さい田んぼ等は収穫皆無

にもなりかねません、
小さい子供などが石をぶつけたりすると反対に猿の方が石を投げて来て危ない

のです、
私たちが追い払ってもすこしは逃げるのですが後ろを見ながら逃げて 

追うのをやめると逃げるのをやめるのです、
そして石を投げても只では逃げないのです、田の岸に刈ってある稲束を抱えて

山へ逃げるのでした、
稲だけではありません、柿、栗、サツマイモ、野菜などほとんどのもの

荒されます、
テレビに出てくる猿は愛敬があってかわいいのですが野生の猿は
実にずうずうしいのです、
他の動物たちは電気牧柵を張るとまず入ってきませんが猿はだめなのです、

電牧は地面に足が付いていなければ効果がないので
電牧のポールに登られると全く効かないのです、
しかしこれには私たちにも原因があるのです、
戦後 急速に植林が行われました、この村でも植林の出来る山はほとんど 杉 

桧が植えられています、
その結果動物たちの餌になる木の実などがほとんどなくなって食物に困った動物

たちが里へ降りてくるようになったのです、
話は横にそれますがこの植林の木材も一時は高値に売れた時代がありましたが

最近は全く売れないのです、
1昨年も近所の人が杉の立ち木を売りましたが搬出

の人件費を払う
とお金が足りなかったそうでした、
木材の安値と共に山の価値が大きく下がりました、
それと 今の若い人達には山の境界線が分からない人が大変多いようです、

私たちにも共同持ちの山林など境界線の分からない山林
があります、これは役場

へ行っても登記所へ行っても分かりません
境界線の分からない山林は売り買いも立ち木の売買もできないのです、
世代の交代と共にそういった山がいたるところに点在するようになることが予想

されます、
ずっと昔 の話なのですが酒1升付けて山をもらって もらったと言う話
を聞いたことがあります、やがてそんな時代が来るかも知れません、

 

元のページへ戻る、