RZ250R
YAMAHA
発売即ナナハンキラーとして有名になったRZ350、その普及モデルとして弟分のRZ250が登場。鮮烈なデビューとクラシカルな存在感から初期型がもてはやされていますが、後発で続々と発売される他社250ccクラスを圧倒的な速さで蹴散らしたのは、このRZ250R(2型)でした。
VTを好きになってからというもの、RZ250に対してはライバル視こそすれ興味は一切無かったある日、近所に小じんまりしたバイク屋がオープンしていた事に気付き、ふらりと立寄って暇そうにしていたオヤジに缶コーヒーを差し入れ、一服しながらバイク談義に花を咲かせていました。すると、先日ここで400ccのバイクを買った青年が「ローンを減らしたいのでそれまで乗っていたバイクを下取りしてくれ」と持ってきました。それがこのRZ250R。サビも多く見かけはボロでしたが、エンジンはいい音をしていました。とりあえず査定をするからと店にあずかることになったので、青年が帰ったあとオヤジに聞いてみました「いくらで下取るつもりですか?」オヤジは「正直このモデルは程度良好でも(下取り相場は)1〜2万円がいいところだが、これはなぁ・・・」それでも大切なお客さんなので...買ってもらった400ccを値切られたと諦めて1万円で下取りするつもりだよと言いました。さらに聞いてみました「で、どうするんですか?」オヤジは残念そうにボソリと「こんなボロ売れないよ、部品取りもできん。廃車しかないなぁ」って。廃車するとなれば手続きにまた費用が掛かるので、売れた400ccの儲けが無くなったわ、はは。と苦笑いのオヤジとそのうしろで廃車を待つだけのバイクの映像が、帰宅してからも脳裏から離れようとしませんでした。
次の日もまたお店に行った私は「このRZ、売れんの?」とオヤジに尋ねました。どうやら整備と登録費用だけで最低5万は必要らしく、「このモデルなら極上車の市場価格上限が9万8千円なのに、6〜7万でボロを買う奴はおらんで」とオヤジは笑っていました。確かにそりゃそうです。「じゃぁ俺これからパチンコ行ってくるわ。もし大勝ちしたらバイク買っちゃるけん廃車にするなよー」と店を出ました。間際、オヤジが「ほな6万円でええわ、せいぜい頑張ってこいや」とお約束の冗句を返してきました。で、何故かそれから3日間パチンコを打ち続ける自分がいました。トータル何十回目かのフィーバーを当てた時、まだそのバイクがお店に残っていたら買ってもいいやという気持ちになりました。ボーナスゲーム終了後、深追いせずにその台を離れ、獲得した6万円を握りしめてオヤジの店へと急いで走りました。
ピカピカに整備されたそのバイクと、ニヤリと笑うオヤジが私を待ってくれていました。
このRZは見かけはボロでしたが本当に調子が良かったです。それからしばらく...どうしてもそのバイクが欲しいという友人が現われるまでの間、本格的2ストレーサーを充分に満喫しました。ナナハンキラー譲りの真の速さと怖さ、そしてオヤジの笑い顔が印象的な思い出の一台でした。