越谷の声。
「ああ、わかってる。いかにもJR沿線って雰囲気になってきたぜ・・・」
カアッ!
春日部がそう言い終わるか言い終わらないかの間に、眼前にまばゆい光が現れた。
「・・・どうやら、おいでなすったようだぜ。」
そう、ついに奴が、その姿を見せるのだ。
光が徐々に弱まるとともに、その輪郭がはっきりと見えてくる。
「・・・貴様が、浦和か。」 身構えながら、越谷が質問する。
「如何にも。余が県庁所在地、浦和である。」
穏やかな中にも威厳に満ちた口調。浦和は語り続ける。
「越谷に春日部・・・貴様らの裏切り、余はすべて見通しておった。しかし、 自らその過ちに気づくのを待ち、あえて制裁は加えずにおったのだ。」
おもむろに二人に近づいてくる浦和。空気が徐々に張り詰めてくる。
「しかし、事ここに至ってしまっては止むを得まい・・・」
足音が止まった。
「せめて冥土の土産に、この浦和の恐ろしさをその目に焼き付けておくがいい」
ガカカッ!
言うが早いか、閃光が走った。
浦和の必殺技、PARCOだ。
しかし。
「何っ」
越谷、春日部、ともに間一髪で直撃を逃れた。
「・・・防ぎおったか」
先制攻撃を防ぎ、ひとまず安堵する2人。
「VARIEガードで防げるか自信はなかったが、やってみるものだ。」
「ふん、どうやら、俺のロビンソン百貨店が最強だな。・・・どうした浦和よ、 県庁所在地の力とやらはそんなものか!」
「・・・」
「今度はこちらの番だ!いくぞ越谷!」
「おう!」
2人が構えをとったその時、
「何ッ!」
突然、死角から何者かが現れた!
「ユニヴァーシティ・オブ・サイタマ!」
「うわあっ!!」
「春日部!」
不意打ち。まともに食らった春日部が倒れる。
「後ろかっ!?・・・伏兵とは卑怯な!」
「・・・戦いの場で今更何を。・・・だが、伏兵ではない。」
「何っ?」
「分身だ。」
「いったい何を・・・ぐふっ!?」
突然の衝撃。越谷の横腹に、さらに別の何者かが一撃を加えた。
「ほう、倒れぬか。」
「くっ・・・この攻撃、ただものではないな。誰だ!」
「私か。私は浦和。」謎の男の声がした。
「何ィ!?馬鹿を言え、浦和ならあそこに・・・」
「これは失礼。ただの浦和ではない。・・・南浦和だ。」
「南・・・何だと?ぐふっ!」
さらに一撃を食らう。
「どうだ、南浦和特製、市民文化センターの味は。」
(くっ・・・これは、俺のサンシティに勝るとも劣らない衝撃・・・い、いったいこいつ?)
ドウッ!
春日部のほうからもさらに異音がする。
「北浦和の奴、もうウラワ・ハイスクールまで叩き込んだか。せっかちな奴め。」
(北と南・・・そうか、奴が分身と言ってたのがこれか。だが春日部にも・・・)
「カスカベ・ハイスクール!」
ズガアアン!
北浦和と春日部、互いの技が衝突した。
北浦和の技を和らげ、最小限のダメージで食い止める春日部。
「不意打ちでなければ、お前の技などそうやすやすと食らう道理はないぜ!」
「・・・フン、伊勢崎線沿線ごときが生意気な。いくらあがいても、貴様らの絶望は変わらんぞ。」
「ハッタリを!喰らえ・・・うっ!?」
シャシャッ!
何者かの風切り音。しまった、何故読めなかったのか・・・後悔するが、もう遅い。
ドガドガァッ!
左右両サイドからの、さらなる伏兵、いや分身の攻撃が炸裂する。まともに食らう春日部。
「き・・・貴様らは・・・まさか・・・」
分身たちがエコーのかかった声で答える。
「そう・・・東浦和と西浦和だ。」
(後編につづく)