さて、このコーナーもいよいよ最終回が近付いて参りましたが、 やはり当時の雰囲気を語るのに、ファミコンの話は欠かせないだろう、 ということで、PC−8001とはあまり関係ないが、 少し書いてみるとしよう。
そもそも、私とファミコンの衝撃的な出会いについては、 序章で詳しく 触れてあるので、そちらを参照してもらうとして、 結局私は、パソコンを買ってもらったためにファミコンを手にいれることは できなかった。ファミコンでゲームをするといえば、専ら友達の家で やるしかなかった。それも、だいたい5人とか10人とかの大人数で 集まってやることが多かった。ファミコンは、野球やサッカーをはるかに 凌ぐコミュニケーション手段だったといえる。
とにかくファミコンのゲームは数が多いうえに持っている奴が多かったので、 パソコンよりも遥かに多くのゲームを体験することができた。そんな中にも、 いろいろと印象に残るゲームはあった。
当時私が最も魅了されたゲームといえば、 ナッツ&ミルクだったろうか。 巷ではロードランナーの方が人気があったが、 私はあまりあのスクロールが気に入らず、 さらにナッツミではジャンプできることによる自由度の高いアクション が展開されることなどから、気に入っていた。BGMなどによるテンポも良かった。
そして、やはりゼビウスにも夢中になった。 夢中になったといっても自分で持っているわけではないので、 そう多くはプレイできなかったわけではあるが、 当時は「誰が一番最初にアンドアジェネシスを倒せるか?」というのが 興味の焦点であった。結局一番最初に倒した時は相打ちで、倒した直後に 自分もやられてしまって、みんなで「おしいー。でも、ついにやったぜ!」 とか言っていたような気がする。
もちろん、数々のクソゲーも体験した。「おにゃんこTOWN」 や「オバケのQ太郎」、「エグゼドエグゼス」「カラテカ」、それから 「子猫物語」などは特に印象に残っている。
やはりクソゲー率の低いのはナムコや任天堂のゲームであった。もちろん、例えば任天堂では、 「アーバンチャンピオン」や「デビルワールド」「ドンキーコング3」などの いまいち面白くないゲームも存在したが、それでも、 どれも一定のレベルには達していたといえよう。
「アイスクライマー」は当時のお気に入りのゲームだった。 これは確かバルーンファイトと同時発売だったと思うが、 「バルーンファイト」が2〜3回で飽きてしまうゲームだったのに 比べて、このアイスクライマーは多彩なキャラとステージにより、非常にリピート性の高い 作品に仕上がっていた。また、タイトル画面、登場キャラクター、音楽、ゲームオーバー時の 演出など、作品全体のセンスも好きだった(ちなみに、「クルクルランド」も演出的には 非常に気に入っていた。ただ、ルールが変則的なため、ゲームとしてはあまり好きではなかった。 今は結構「変なゲーム」が好きな私だが、この頃はわりと保守的だった。まあ、おそらく 多くの子供がそうであると思うが。)
初めてエンディングというものを見たのが 「ドルアーガの塔」であった。普段のときでも 私はあまり自分ではゲームをやらないほうで、見るだけのことが多かったが、 この「ドルアーガの塔」は もしかしたら一度もプレイしていないのではないだろうか。とにかくマニアックな 内容だったが、みんな結構熱中していた。「突然真っ暗になったり、偽の階段があったり するんだぜー。本当にすごいゲームだ」などと力説する者もいた。 とにかく、何度やってもクリアできないゲームだったが、あるとき一度だけ奇跡的に 解けたことがあり、その時にあのエンディングを見たのであった。その時は解けたという 興奮でエンディングについてはあまり思うところはなかったが、 あとから考えてみると、このような凝ったエンディングというものの存在を知ったことは、 結構大きな影響だったのではないかと思う。
そんなある日、「こんど任天堂から、『スーパーマリオブラザーズ』というすごいゲーム が出るらしい」という噂が立って、みんなで 任天堂に電話して どんなゲームか聞いてみたことがあった。その話によると、なんでも 画面がスクロールして、海などの面も登場するらしい。とはいえ、 いまさらマリオブラザーズの続編である。何がそんなに凄いのかはいまいち理解できなかった というのが実状であった。(ちなみに、そのとき想像したスーパーマリオは、 こんな感じ)。
しかし、いざ実物を見てみると、これはまさに凄いの一言であった。その日、 何気なく関根亮介の家に遊びに行くと、 ちょうどその「スーパーマリオブラザーズ」 をやっているところであった。とにかく、彼は興奮気味に、「凄い」を連発し、 プレーしながら、いかにこのゲームが面白いかについて熱弁を振るっていた。
確かに、遊んでいくうちに(というか、遊んでいるのを見ていくうちに)、 そのゲームの凄さは徐々にわかってきた。突然土管のなかに広がる地下室。 地下面の天井を進むと出てくるワープゾーン。何もない空間をたたくと出てくる 1UPキノコ。そして豆の木(?)を登ると雲の上に出れたり、とにかく どこに何が隠されているかわからない、この上なく探検心をかきたてる ゲームであったのだ。我々は当然の如くこのゲームの虜となり、全面クリアを めざした。
しかし、やはりこのゲームは難しい。ワープゾーンを駆使して5面までは行けるが、 そこからは自力で進まなければならない。我々は、激ムズのアスレチック面・6−3で 立ち往生していた。 そんなとき、「秋本(仮名)が8面まで行ったらしい」という噂が立った。 我々は初め「嘘にきまってるぜ」などといって本気にしなかったが、 あるとき、どうやらそれが本当らしいということがわかった。 「8ワールドへのワープゾーンが見つかった」というのだ。それは、 4−2の地下面に隠されていた。4−2にはすでに5ワールドへのワープゾーンが あったため、まさか他にもあるとは思っていなかった。
非常に叩きにくい場所にあるそのブロックを叩くと、地下面にもかかわらず豆の木が 出てきた。「まさかここから地上に出れるとか?」「そう。地上に出るんだよ。」 豆の木を登ると、確かに巨大キノコが立ち並ぶ地上面に出た。隠し地上面だ。 スーパーマリオ最大の隠し面ともいえるこのステージを初めて見たときの興奮は忘れられない ものがあった。おそらく多くのプレイヤーが同じ気持ちを味わっただろう。 スーパーマリオ2ではこんな隠しが山ほどあって楽しませてくれたが (8−2をクリアしたときとかは、このときに近い興奮があった。)、やはり その衝撃の大きさでは、このときが一番だっただろう。 その面を進んでいくと、ワープゾーンが出てくる。なんと、6、7、8面の後半ステージ すべてに行ける贅沢なものだ。 我々は、迷わず「8」を選択する。いよいよ、ラストステージへ突入だ・・・!
ラストステージは、本当にものすごい難度の面の連続だった。まず8−1。 面自体も難しいが、とにかくタイムが少ない!のんびり探索していると、あっと言う間に タイムオーバーである。そして8−2。最初にいきなりゴールにあるのと同じような 階段が出てきて、そこにジュゲムがトゲゾーを投げてくるのを始め、向こう岸との間に 1ブロックしか足場がない崖など、とんでもない難しさ。そしてそれをクリアすると8−3。 ただでさえ難しいハンマーブロスが8匹連続で出てきて、しかも最後の4匹は 常に地上にいて、下から叩くことができず、奇跡的なタイミングでかわしていくしかない。 ファイアーマリオでいけば何とかなるが、そのためにははじめの4匹をノーミスで倒さなければ ならないし、運良く8−2からファイアーマリオで来れても、プレッシャーで凡ミスを 犯してしまったりする。 8−2をなんとかクリアしても、この8−3はどうしても越えられない。 何度も挑戦が繰り返され、そのたびごとに破れ去った。
しかし、その間にコンティニューコマンドを発見したこともあり、ある日ついにクリアー することができた。そして、最終ラウンド、8の4。 はじめにやったときには、全く意味不明だった。なにしろ、行けども行けども 平坦な道が続くだけ。そのうち、土管に注目して下を押してみると、中に入れる ことがわかった。土管から別のところに行けるのだ。城の面では、初めての土管に 入れる面ということがわかった。しかし、これも間違った土管に入るとあっと言う間に はじめに戻されることもあり、正しい土管を見つけるのはひと苦労だった。
アクションゲームなのにマッピングをしたのは、これが最初で最後だったかもしれない。 とにかく我々は、何をどうすれば先に進めるのか詳細に検討し、そのうち何とか 最後の舞台にたどり着くことができた。しかし、そこには最後のハンマーブロスが 待ちかまえていて、そこを何とか越えてもクッパは炎ばかりかハンマーまで投げて 攻撃してくる。キノコやフラワーが全く出ないこの面では、あまりにも酷な試練である。 最後まで来てみたものの、結局ここを越すことができなかった。
しかし、ある日ついにその最後の難関をクリアし、エンディングにたどり着いた・・・ という話を聞いた。そう、その日、ちょうど私はいなかったのだ。 結局私は、スーパーマリオのエンディングを見ることはなかったのであった。 (もちろん、ずっと後で見ることはできたが。) まあ、「音楽はいいけど、結構あっけなかった」という話であったので、それほど 悔しがらずに済んだのであるが。
次回・番外編3