第10章

ところで、パソコンの特徴はプログラミングができるということである。
独自のゲームはあるものの、ただゲームをするだけならファミコンと変わらない。

そして、私はプログラミングができた。

となれば、「プログラミングをして遊ぶ」、すなわち、「みんなで ゲームを作って遊ぶ」というのもアリの筈である。まあ、実際には そんな根気のいる遊びというのはそうそう行われなかったのだが、 それでも何回か、そういったことが行われたのである。

作ったのは、いずれもアドベンチャーゲームやロールプレイングゲーム である。最初に作ったのは、 なんかパソコンの前でヒマを持て余してダベっているときに なんとなく作ってみましたーというもので、これ以上ないヘボヘボな 内容であった。もちろん残っていないので記憶に頼って内容を書くと、 runして最初に「ワカレミチダ。ドウスル?(1/ミギ 2/ヒダリ)」 と出てきて、ミギを選ぶと「シンジャッタ。」と出てゲームオーバー。 ヒダリを選ぶと「イキチャッタ。ヒデブ。」と出てきて、その後 円が描かれ、「ニョキニョキ、アッ、ソルダ!(C)namco」と出てきて みんな大爆笑、というものであった。ちなみに、その後どうなるかは 全く憶えていない。そこまでしか作らなかったような気もする。

次の3つはどれが先か憶えていないが、 「関根アドベンチャー」を まず紹介しよう。これは、同級生の 関根(仮名)という人物を題材にした アドベンチャーゲームである。ある日曜日の午前、友人Oが 遊びにきたときに勢いで作ったゲームで、2〜3時間で完成した。 とにかく勢いだけのゲームで、runすると土俵にしか見えない絵が 描かれて「セキネガイマス。ドウスル?」と出る。ここでの正解は「カケッコ」。 これを入力すると「『ウンショ ウンショ』アナタハカッタ。」 となって先に進める。また、ラストシーンで突然「リョース?」と 聞かれて、「ケノロマ」と入力しないと先に進めない (これは、当時仲間内で作成した小説「モリコ殺人事件」の中で使ったネタだった) など、極悪な内容であった。しかし、このゲームもなかなか受けた。

そして、「タラコ・クエスト」というのもあった。これもたしか日曜に 作った憶えがあるが、もしかしたら「関根アドベンチャー」と記憶がごっちゃに なってるかもしれない。これは、名前の通り「ドラクエ」のパクリであるが、 戦闘シーンしかない。敵はすべて友人とかクラスメートであり、 数字を入力すると、その数字に対応する敵が出てきて くれるというものである。そして、魔法もちゃんと使える。「ホイミ」「ギラ」 「ラリホー」「トヘロス」「アベシ」の5種類があり、ホイミを使わないと 体力が回復せず、使えばいくらでもHPが増えるというシステムになっていた。 このため、レベルが上がるたびにホイミを使いまくってHPを増やしていく、 ということになる。これに最適なのが11番の「ブイケン」という奴で、 スライム並に弱いくせに経験値が1000という敵であった。

ちなみに、「トヘロス」は一発で戦闘から抜け出せる呪文で、 「アベシ」は一発で自分が死ぬ魔法である。まちがって「アベシ」を 選んでしまうとすぐさまゲームオーバーになるという魔法であった。

13番の「タラーコ」、14番の「キースタラコ」、15番の「ヌードタラコ」が 異常に強く、これらを倒すことが目的である。しかし、倒してもエンディングは なかったと思う。

そして、もう一つが、 「ドラえもんアドベンチャー」 (副題:未来の宇宙戦争)である。 これは、当時(5年生の頃)作っていたペーパーアドベンチャーを ゲーム化したもので、共同製作者の西山(仮名)とともに 企画したものだった。ドラえもんが未来の世界に起こった宇宙戦争を 止めにいくという至極まっとうな内容であり、マルチストーリー (ストーリーが2つに分かれ、片方がバッドエンド)や、 途中でピンチを救ってくれるおじいさんが実はドラミとセワシだったなどの どんでん返しもある、ドラマチックな展開のゲームだ。 単なるペーパーアドベンチャーのくせに「ADV1」から「ADV5」まで 分かれているなど、当時からゲームを意識したつくりになっていて、 ゲーム化は当然のなりゆきだった。

とにかく、アドベンチャーゲームの命は絵である。私は まず紙に下絵を描いて、 それぞれのラインやサークルなどの座標を 目分量で書き込んでいった。 そして、それをもとに実際にcmd line文やcmd paint文などを 使って絵を描いていくのであった。この作業はめちゃくちゃ辛く、 ひとつの絵を仕上げるのが大仕事であった。しかし、その甲斐あって、 できあがった絵は関根アドベンチャーとは比べものにならない、 4色カラー(黒も入れて)とは思えない出来栄えになったのである。

だが、あまりにも重労働だったために作業が進まず、結局ADV1を 作ったところで力尽きてしまった。その後、西山が 「ADV3を迷路方式にしてゲームらしくする」とやっていたりしたが、 結局ADV2の元絵を描いたところから進むことはなかった。


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