第3章

いつごろ手に入れたかは覚えていない。気がつくと、その本は家にあった。
その本には、まず最初に、『マイコンくん』が『はるみのうち』に来た場所が 描写されていた。その後、「harumi」と打ち込んで画面に「harumi」と 出ることが紹介され、「すごいでしょ!キャーキャー!」という筆者の感想が 書かれていた。それだけでは飽きたらず、今度は大文字で「HARUMI」と打ち込んで みたり、あげくの果てには「ハルミ」と打ち込んでみて、「これで驚かない人は、 『おいしゃさん』にみてもらわなきゃダメね!ウン!」と来る。

そして、次に「おえかき」である。PC−8001のグラフィック・キャラクタを 使ってキャラクターや風景画を描こうというもので、ここで表現できないのが 残念だが、結構それらしい絵ができていたり、立体文字を表していたりした。

その次に来るコーナーが、「マイコンくんは、おもちゃばこ!」というもので、 「print 1+1」とやると電卓と同じことができる!とか、カラーの使いかたとかが 紹介されている。そのカラーの説明にしても、まず「color 2」としてみて、 「あれー、おかしいよー、『てんめつ』しちゃってるぅー!」となり、その後 マニュアルを読んで、「あっ、わかっちゃったあ!」といってCONSOLEの説明に 入り、最後に、
「COLORくんは、もっといろんなことができちゃうの!」 「COLOR ,135としてみて!」 「『なーんだ、なにも起こらないじゃないかあー』 ですって?そんなこといって、あとで泣いちゃったって知らないから!じゃあ、 HOME CLRを押してみて…」
としてバックグラウンドカラー機能の説明をしたり…とにかくCOLORに関する機能が これでもかというくらい丁寧に解説されていた。

そしてプログラミングに関する説明がされるのは、やっと次の章からであった。
それもまた一筋縄ではいかなくて、話は『こまきさん』(サークルの先輩らしい)との 対話で進んでいくのだが、最初に

小牧「はるみさん、プログラムって知ってる?」
はるみ「えっ?『キログラム』?おもさのことでしょ?」

とかいう会話が出てきたりする。

そのように、なにかとスゴい「はるみのプログラミング・レッスン」であったが、 おかげで小学生の私でも、ムリなくプログラミングに関する知識を 得られたのである。

その後のページでは、実際にゲームを作る様子が紹介され、 「あるけあるけゲーム」 などの製作の過程で、キャラ移動、画面サーチ、キー・スキャンなどの 重要テクニックを覚えていく、という形になっていた。実際、私はこれがなければ 自分でアクション・ゲームを作ることはできなかったかもしれない。
サンプル・プログラムを打ち込んだりして、私はそのテクニックを、一つずつ 自分のものにしていった。

もちろん、その本に載っていたプログラムは、片っ端から打ち込んだ。 本文中のプログラム「あるけあるけゲーム」「あるけあるけゲーム・はるみの 『カンペキ・バージョン』」「地雷突破作戦」「SPACE STRUCTS」 のほか、最後に「センパイたちのプログラム集めちゃいました!」として載っていた 「カーレース」「パチンコ」 「ハッスル」 「ファイヤー」「マンホール」「もぐらたたき(バーミン)」 「SPACE」「タイプ練習」もすべて打ち込んだ。 とにかくどのゲームも文句なしに面白くて、夢中で遊んだのを覚えている。 「タイプ練習」を打ち込んでみたが、N80モードだったためにセーブできず (このプログラムだけマシン語だった)、一日の苦労が無駄になったというのも いい思い出である。

また、今から見てみても、「ハッスル」や「パチンコ」の解説のところで 「ゲームを『おいしく料理しちゃう!』というと、 すぐに『カラーグラフィックス』で『サウンドピコピコ!』って思っちゃうけど、 ゲームには、それに合った料理のしかたがあるんです」 というようなことを言っていたりして、けっこう「おおっ」と思わせるような ところがある。

まあこれは、「FORESIGHT」というサークル(高橋はるみが所属していたサークル。 わりと有名だったらしく、多くの入門書がここから出ている。)のレベルの高さから 来ているのかもしれない。

ところで、この高橋はるみが、「実在の人物ではなかった」とか、「実は男だった」 とかいう感じの話を聞くことがある(ベーマガで、山下章が 「初期に活躍した女流(?)プログラマー」と紹介していたり。)が、 実際どうなんでしょう。誰か知ってる人がいたら教えてください (しかし、あの「はるみのドキドキ交換日記」とかを 男が書いていたとは思えないが…かなり細部までリアリティーのある話だったので、 フィクションだったとしたらある意味凄い)。


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