余談ではあるが、私の両親は北海道出身である。従って、親戚も だいたい北海道にいるのであった。しかし、一家族だけ東京にいる親戚がいて、 正月の年始まわりなどは、だいたいそこの家に出かけるだけだった。 で、そこの家にもやはり、PC−8001mkIIがあったのである。 これは別に偶然でも何でもなく、うちがパソコンを買うときに、 この親戚の人にアドバイスされて、同じものを買ったのであった。
そんな家庭的な話題はさておき、この家のソフト資産は、私の家を 遥かに凌駕していた。そこでは、様々な高度なゲームが、これでもかと 動いているのであった。
それは、いわゆるマシン語を駆使したゲーム達であった。
このような高度なゲームとの出会いは、よく知らないおじさん(親父の友達 だったと思う)にもらったカセットテープに始まった。 そのテープには、高速シューティングゲーム「バリア・アタック」(ちなみに このゲームは、後に、ロードするときに 間違って録音ボタンを押してしまっていて、 そのまま帰らぬプログラムとなってしまった)、 愉快なサウンドと軽快なミュージックが楽しい「パックマン」、 モノクロながら抜群の面白さの「インベーダー」、 そしてなんだかよくわからない「スター・トレック」など、 当時の私のレベルから見たら神の領域に達していたといっても過言ではない 5本のゲーム(あと1本は忘れた)が入っていたのであった。 どのくらい高度だったかというと、「パックマン」以外の4本は Nモードでないと動かない ので、貰ってしばらくの間「パックマン」しか遊べなかったというほど 高度であった。
そして、前述した親戚のうちにあったのも、同じようなゲーム達であった。 面白シューティング・ゲーム「BON・BON」、 グラフィカルでスピーディーな迷路型アクション・シューティングゲーム 「モンスターハウス」、画面は単純だが(もっとも、私の作るゲームよりは キレイだったが)とにかく面白い「スペース・マウス」などは とくに印象的であった。私はこれらのゲームを8本ほどコピーした テープをもらい、家で存分に面白ゲームワールドを堪能したのである。
その親戚の家は、書籍も充実していた。「I/O別冊 PC活用研究」は、 前述の「BON・BON」のほか、「TURTLE RESCUE」( 「ターピン」の移植)などの 超面白そうなゲームが満載の夢のような本で、夢中で読んだものだ。 そのいくつかの書籍のうち、私は「mkII FAN BOOK〜 PC−8001mkIIマシン語入門」(という感じのタイトルだったと思う) を借りて、家に持って帰った。
その本が本当に入門書であったかどうか、今となっては良くわからないのだが、 とにかくその本には、マシン語を駆使した高度なオリジナルゲームの数々が 掲載されているのであった。
で、当然のように、そのプログラムはバカ長いのであった。とにかく、 BASIC部だけでも「はるみのゲームライブラリー」のゲーム1本分は あろうかという長さなのに、そのBASIC部はオマケみたいなもので、 本体はその後に続く、何だかよくわからない数字の羅列かと思いきや アルファベットなども入っていたりする、そしてそれが延々と 10ページも20ページも続いていく、なんかスゴい部分なのであった。
それでも、掲載されていたゲームがあまりにも面白そうだったので、 これは何としてでも打ち込まなければなるまいということで、いろいろと 打ち込んでいった。その本に載っていたのは、BASICゲームの 「アッチコッチゲーム」(これは、オールBASICだけあってあまり 面白くなかった。ハイレゾグラフィックを使っていたので画面はわりと きれいだったが。)、これもオールBASICのお絵描きツール 「ピクチャージェネレータ」、さらに、これもオールBASICの (なんか結構マシン語少ないな、いま考えると)「人生ゲーム」、 その他マシン語を駆使したシューティングゲーム 2本、などがあった。その他、打ち込まなかったものの、 シミュレーションゲームや、アドベンチャーゲームなどもあった。 (後者のアドベンチャーゲームは、答をわからなくするという理由だけで バカ長いマシン語プログラムになっているという悲惨なものであった。) 「ピクチャージェネレータ」は、それまで「お絵描きツール」というものに 触ったことがなかったので、かなり遊んで、PC−8001mkIIの ハイレゾグラフィック(今さら言うまでもないが、320×200ドット、 4色カラー)の世界を堪能した。しかし、絵のデータがやたら容量を食うらしく、 あるとき絵をセーブしてみたら、 テープに入りきらず断念したということもあった。 「人生ゲーム」のイベントの文章を友達と勝手に変えて「エロセイゲーム」とか やって遊んでいたのもいい思い出である。
中でも印象深かったのが、「ASTRAY」と「フルーツ・シスターズ」 であった。前者は、本の最初に載っているゲームで、3次元の迷路が 高速に表示されるという、とにかく凄いという印象のゲームだった。 多分、一番最後に打ち込んだゲームだったと思う。というのもこの プログラムは、他のゲームに比べても格段に長く、打ち込むのに 相当の気合いを必要としたのである。朝早く起きて打ち込みを開始、 昼頃に関根(仮名)がやってきて打ち込みを中断、 結局打ち込み終わったのは次の日の夕方であった、というようなことを 学校の作文で書いた覚えがある。
「フルーツ・シスターズ」は、一番面白そうなゲームであった。はじめに 本を読んだとき、「このゲームだけは、なんとしてもいつかは打ち込みたい」 と思ったものである。これは、9つの画面を移動し、モンスターを 避けつつフルーツを全部取っていくという、ドットイート型のゲームだった。 フルーツの他に、シャツ、ピストル、ナイフの3種のアイテムも落ちていて、 その上でスペースキーを押すと、フルーツおじさん(自機)がそれぞれの アイテムに変身し、シャツは敵を通り抜けられ、ピストルは敵を倒し、 ナイフは敵も倒せてフルーツも取れるようになる。ランダム時間で元に戻るが、 時々バグで全くもとに戻らないことがあって、シャツやピストル (この状態ではフルーツを取れない)のまま元に戻れなくなって、しかも ナイフがもう残ってなかったりするとクリア不能になったりした。我々はこれを 「永遠のシャツ」「永遠のピストル」と呼んで恐れたのであった…とまあ、 とにかく面白いゲームであったのだが、打ち込みは当然のように大変だった。 「何々番地以降は打ち込まなくても動きます」と書いてあったので、 とりあえずそこまでならなんとかなりそうだということで打ち込んでみたが、 実行してみてびっくり、迷路が全くなくてあたり一面フルーツだらけ ということもあった。(ようするに、「打ち込まなくていい」と書いてあった 部分は迷路データだったのだ。)これじゃゲームにならんということで、 ヒーヒー言いながら(言ってないが)残りを打ち込んだ。しかしまあ、 それだけに、ちゃんと動いたときは感動ものだった。友達の間でも、このゲームは 「BON・BON」と並んでとにかく好評で、「よく打ち込んだ、偉い」 と誉め讃えられたものである。