地域にかける私の願い
〜地域で、地域と、地域のために、生きる〜
1.『居る』だけで『暮らし』のない地域社会
 最近「私たちは、どこで生活しているのだろうか」と思う。
 仕事と遊び(レジャー)と暮らし、この三つの関わりが地域社会から離れてしまって、次のような状態になっている。
 (1)仕事は、自動車で自宅の車庫から会社へ(途中で、朝夕の時候の挨拶がない。地域の状態をじっくりと観察できない)
 (2)遊びは、人工的なレジャー施設に行って、料金を出して楽しむ(ゴルフをしたり、遊園地に行ったり、規格的な自己満足だけの遊びをしている)
 (3)地域の行事は簡素化した。近所で買い物できる小売店、専門店が少なくなった(地域での共通の言葉と話題を失ってしまった)

 いつからこんな状態になってしまったのか? その地域に住んでいるのにそこで『暮らしている』雰囲気が伝わってこない。その地域に『居る』だけになってきている。

2.我々大人が子育ての風土をつくろう
 「昔の子どもの遊びは……だった」
 「今時の子どもは野外の遊びを知らない」
 「現代っ子は家の中で遊ぶ」
 「小人数で遊ぶ、異年齢の子と遊ばない」
 このように、子どもたちを取り囲む状況、周囲の環境などについて、多くの方々から、いろいろな分析や指摘があり、こうしてあげたいとの希望や提案がある。
 しかし残念なことに、その提案の『主語』はいつも子どもたちである。子どもたちがこんな状態にあるのは「子どもたち自身の問題だ」ということを前提にしているかのようだ。 果たして、そうだろうか?
 私たち大人の側には問題はないのか?

3.我々の理想とする地域社会を
 子どもたちは、大人たちの鏡であり、社会の鏡である、と思う。今まで私たちが築き上げてきた社会状況の中で、今の子どもたちは何とかこの社会に順応しよう、適応しようとしている。もし、子どもたちの『現在の状態』が、理想的な状態でないとしたら、それは私たち大人の『現在の状態』も理想的ではない、と言える。
 例えば、私たちは子どもたちに近所の子どもたちと遊ぶことを望む。しかし、私たち大人はどうか? 休日ともなれば家にいない。近所の人の顔は知っているが名前は知らない。寄り集まって来て語り合う行事もない。秋祭りなども形式的になって、地域のコミュニケーションが薄れてしまった。
 私たち大人は勝手なもので、地域社会がこんな状況になっているのに、子どもたちに対しては「今時の子どもたちは……だ」と言っている。
 私たちはどのような地域社会を求めているのだろうか? いや、それとも、もう地域社会など必要としないのだろうか?
 大人にも子どもたちにも。

4.変わらない、変わっていない『子ども心』
 大人になっても忘れていない、子どもの頃のこと。毎日がワクワクしていた々。ちょっと危険なこと、ちょっと大人びたこと、注意され、叱られる事が面白かった。みんなが集まってきて、何か知らんけど、ワァと遊んだ。
 現代っ子に『そんな気持ち』がないなんてことはない。私たち大人の思い込みだ。『子ども心』は変わらない。変わったのは大人の方だ。地域社会の中の何かを見捨ててしまい、何かを忘れてしまったのだ。

5.日常生活の中で協力しよう
 今まで地域でやっていたことがたくさんあったのに、残念ながら現在ではそれは多くの場合地方自治体が引き受けていて、いわゆる「役所仕事」として「税金を使って」処理されています。
 これから、自分たちの地域の『生活環境を向上させるため』の作業には、地域に暮らす私たちが日常生活の中で共同して協力していきましょう。

6.楽しい気持ちで参加する
 今「新しい地域社会をつくろう」と考えて行動している人は、かつてのような「自己犠牲」とか「奉仕」とか「人類愛」とかいった固いイメージや難しい発言をしなくなってきています。 逆に「楽しいからやる」とか「いろいろな人と友達になれるからやる」といった素直で肩の張らない気持ちで参加する人が増えてきました。みんなで手を取り合って、やりましょう。とにかく、これをやり始めたら、他にこんな楽しいことはないことに気付くはずです。

7.新しいコミュニティーをつくろう
 私たち大人が楽しめる地域社会、それは子どもにも楽しい。私たちの手作りの地域社会、それは子どもにもやさしい。
 夢とか空想の世界ではありません。家庭のちょっと外のことなのです。現実の日常のこと、塀の外、ドアの外のことなんです。
 新しいコミュニティーをつくりましょう。しかし、私たちの経験した過去に戻すことはありません。みんなでワイワイ言いながら現代に相応しい新しいコミュニティーをつくりましょう。
 このような地域の日常生活の充実こそが、次代を託す子どもたちを育てます。
                     
 (92・11・25)
(「子どもの街をつくる会」の機関紙「かわら版」原稿
平成4年11月 林崎校区児童生徒校外活動推進協議会 発行)

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