南海地震は予知できる
中村不二夫
高知県土佐市宇佐町

異常潮位を観測することによって、次の南海地震を直前に予知できる可能性がある。 それにより多くの人命を守り、事前対策につなげることを目的としてこのサイトを運営する。

NPO法人 南海トラフ地震直前予知連絡会

潮位観測の根拠

日本地震学会発表論文

2011年度: 昭和南海地震直前の異常潮位について

On the irregular tide just before the Showa Nankai Earthquake

#Fujio Nakamura (Misato Marine Hospital)

1.はじめに

昭和南海地震直前の異常現象の有無をテーマとし、徳島・高知両県の沿岸部の程全域を5年間費やし、 漁師たちの証言を収録した。

この証言を時系化することにより昭和南海地震直前に発生した「異常潮位」の実際を把握することができた。

同時に各地で発生した潮の狂い、井戸の枯れ、宇佐沖の海水汚濁や多くの宏観現象を収録できた。

なお、未調査および証言者不在のため、空白地域ができたことは、今後の課題として残った。

2.証言
(1)井戸枯れ
昭和南海地震1週間前変調井戸(中土佐町上ノ加江)

写真1
昭和南海地震1週間前変調井戸
(中土佐町上ノ加江)

3m強の枯渇井戸(土佐市新居立石)

写真2
3m強の枯渇井戸
(土佐市新居立石)

12月20日21時 枯渇していた井戸(土佐市宇佐町東町)

写真3
12月20日21時枯渇していた井戸
(土佐市宇佐町東町)

12月21日午前2時 枯渇井戸(土佐市宇佐町旭町)

写真4
12月21日午前2時 枯渇井戸
(土佐市宇佐町旭町)

12月21日午前2時 枯渇井戸(土佐市宇佐町旭町)

写真5
12月21日午前2時 枯渇井戸
(土佐市宇佐町旭町)

12月21日午前2時 枯渇井戸(土佐市宇佐町旭町)

写真6
12月21日午前2時 枯渇井戸
(土佐市宇佐町旭町)

昭和南海地震が起きる約1週間前、高知県中土佐町上ノ加江の民家(沖義昭・写真1)の井戸は底をつき、 2~3時間後に復活しこれを繰り返した。

同様に室戸市室津港に隣接する井戸水は枯れ、80m対岸の井戸は枯れず、この水を船に積み込んだ。

(徳永格一)

12月20日16時頃、土佐市新居甫渕の防災井戸は枯れ、 300m離れた新居立石の自宅の井戸(写真2)は3m強の井戸水の低下を起こしていた。

これは「ツルベ」に結んだロープの長さで判明した。

12月20日21時ごろ、土佐市宇佐町東町の民家(柳井春馬・写真3)は、 足を洗うため井戸水を汲んだが枯れていた。

12月21日午前2時頃、土佐市宇佐町旭町の門田仲次は、 宇佐沖の海水汚濁による臭い手を洗うため、井戸(写真4)に行ったが枯れていた。

12月21日午前2時、須崎市浦ノ内塩間の竹村峰子の母は、 お茶を沸かすため井戸にツルベを入れたがカラカラ鳴った。

なお、地震直後の井戸枯れは各地で多くの観測事例がある。

(2)潮の狂い

昭和南海地震が起きる3~4日前、室戸市傍士で海面上昇があり、 海辺の岩(ジンジロ磐)を潮が巻き込んだ。(川上四郎・写真5)

12月20日15時頃、室戸市室津港で約30cmの海面の上下があり、30分周期で繰り返した。 これは岸壁と船にかけてある足場の角度で分かった。(徳永格一)

12月20日16時頃、中土佐町矢井賀、港内のいつもの岩場で野菜洗い中に 30~40cmの海面上下があった。(浜田縫子)

12月20日16時頃、黒潮町田野浦の浜辺で自家製塩のため海水を汲んでいる最中、 30~40cm退潮し、20~30分後に逆に海面上昇があり、膝まで浸かった。 (野村国恵・写真6)

12月20日夕刻、東洋町甲浦沿岸で、スルメイカ釣りの船が異常な潮の流れに遭遇した。 (岡正也、大阪幸雄)

12月20日、高知市春野の沿岸、水深80mで鯛釣り中、海面上昇があり、釣糸が垂直になった。 (松本岩男の父)

12月20日夕刻、足摺岬でスルメイカ釣り中、錨を投入したまま沖合いに流された。 (山下天吉)

その他、宍喰・甲浦・椎名・加領郷・野見・久礼等で潮の狂いの証言がある。


(3)退潮の実際
12月20日 16時
満潮時、土佐市宇佐港より約30隻の鯖漁船が出港した。 このとき、特に潮位に異常はなかった。(多くの漁師の証言)
12月20日 17時頃
土佐市宇佐町橋田の浜辺から3名の漁師が出港したが、浜辺に来たとき、既に潮は大きく引いていた。 同時に過去に経験したことのない速い引潮に遭遇し、船は沖合いに流された。 (浜崎欣一、岡本光義)
12月20日 20時過ぎ
3名は帰着するが、潮は大きく引いていた。
昭和南海地震1週間前変調井戸(中土佐町上ノ加江)

写真7
12月20日24時 座礁現場
(宇佐漁港製氷会社前)

3m強の枯渇井戸(土佐市新居立石)

写真8
12月21日午前1時 本流航路
潮が引き航行困難

12月20日 24時頃
鯖は1匹も釣れず、それぞれ帰港するが、過去一度も座礁したことがないいつもの停泊地で座礁した。 (宇佐漁港岸壁)(横川進)
※ 写真7と本流航路(当時の現場の水深は3~4mあった。 5トンの木造漁船は船主で80cm、船尾で150cmで座礁する。吉村造船)
12月21日 1時半頃
宇佐漁港前の本流航路は潮が引き、船は海底に当たり、航行困難。(松岡好章・写真8)
12月21日 2時
須崎市浦ノ内塩間の海岸干上がる。(竹村峰子)
12月21日 3時頃
須崎市大谷小浦の海底岩干上がる。
12月21日 4時19分
大谷小浦岸壁は潮が引き接岸できず、現場待機したが、この時、南海地震が起きた。(森光次男)

昭和南海地震直前の退潮位(宇佐港周辺)
昭和南海地震直前の退潮位(宇佐港周辺)

昭和南海地震直前の異常潮位
昭和南海地震直前の異常潮位

退潮港と非退潮港
退潮港と非退潮港

退潮港と非退潮港

退潮港と非退潮港

(4)宇佐沖海水汚濁

昭和21年12月20日18時頃、土佐市宇佐町沖合約13マイル、 水深100~150mの大陸棚での海域で約30隻の鯖漁船が操業を始めた。 船の流れを安定させるために投入したシーアンカーや漁具にドロドロとした汚物が付着した。 昨夜までに釣れていた鯖は1匹も釣れず、場所を数回変えたが、どの場所も同様の汚物に悩まされた。 このドロドロ状の物は海草が腐ったような青臭かった。 また過去に経験したことがない悪臭と表現している。 この悪臭は、海全体が臭かった、漁場に着いたときから臭かったという漁師もいる。

3.考察
4.まとめ

昭和南海地震の1週間前に発生した井戸水の変調や潮の狂いは、12月20日17時頃にピークを迎え、 徳島県・高知県の沿岸部にかけての広範囲に「退潮」が発生した。

土佐市宇佐港では最大3m前後の海面低下を示した。 この退潮は12月20日17時頃より南海地震発生までの11時間連続し、潮は込んでくることはなかった。 同様の退潮港は判明しているだけで19港ある。 注視すべきは、退潮港と平均2km離れた隣接港が退潮せず、通常時の潮位を有していることである。

このことは外洋沿いの海面が、長時間凹凸状態にあることを示している。 従って、昭和南海地震直前に発生した「異常潮位」の原因は、基本的に潮が引いたのではなく 「地盤隆起」したことが考えられ、 12月20日17時頃より徳島県・高知県沿岸部にかけて「シワ状」に地盤変動したものと位置付けた。

なお、昭和南海地震以後、同様の異常現象は観測されていない。

参考資料 南海地震は予知できる(中村不二夫)

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