潮位観測の根拠
日本地震学会発表論文
2016年度: 異常潮位の観測による南海地震の直前予知の可能性
The prospect of prediction of the next Nankai Earthquake by monitoring an unusual sea level immediately before the quake
#Fujio Nakamura (The Disaster Prevention Committee of Usa town, Tosa city)
1.はじめに
宝永・安政・昭和南海地震の直前に「潮の狂い」が発生していたことは、 漁師たちの証言・古文書・地震碑などで明らかになっている。 次の南海地震でも、潮の狂いの発生が予想されるため、 土佐市宇佐町自主防災連絡協議会(以下「宇佐防災」と略記)では 「南海地震のための異常潮位観測」を行っている。
2.異常潮位の実際
昭和南海地震
- 地震が起こる4日前、室戸市傍士海岸で潮の狂いが観測された。
- 地震が起こる11時間前から、四国太平洋沿岸部では3m前後の退潮が発生。 以後、地震発生まで異常干潮が続いていた。
- 退潮港19ヶ所、非退潮港27ヶ所。
潮名.中潮 | 満潮 | 潮高 | 干潮 | 潮高 |
---|---|---|---|---|
12月20日 | 15時58分 | 156cm | 22時37分 | 26cm |
12月21日 | 05時12分 | 147cm | 10時30分 | 75cm |
昭和21年12月20日~21日の潮位(高知港) 出展:高知地方気象台
昭和南海地震直前の退潮位(宇佐港周辺) 中村不二夫調べ
昭和南海地震直前の異常潮位 中村不二夫調べ
安政南海地震
- 地震の7日前から、潮の狂いが発生。 漁師たちの証言・古文書・地震碑等で判明。
- 昭和南海地震と類似した異常潮位が発生。 その24時間後に安政南海地震が起きた。
宝永南海地震
- この地震の際にも鈴波が発生(「真覚寺日記」による)。 宝永地震は3連動であり、ほかの地震の余波ではない。
3.異常潮位観測システム
過去3回の南海地震の直前に異常潮位が発生していることを踏まえ、 土佐市の予算で宇佐港岸壁の4カ所に潮位板を設置、2014年から観測を開始。 その中の1カ所を選んで監視カメラによる潮位板の映像を USTREAMを通じ24時間・日本全国に配信している。
観測状況は、当ホームページ()で公開している。
4.まとめ
- 昭和南海地震が起こる11時間前から、四国太平洋岸で3m前後の退潮が発生している。
- 同時に地震発生まで「異常潮位」が続いている。
- 退潮港19、非退潮港27が、同一時間帯に混在している。
- 退潮の原因 ― 上記のことから、地震直前に地殻変動が起こったことが推測できる。 逆に地殻変動が起きない限り、潮の狂いは発生しない。 従って地殻変動と潮の狂いは相関関係にあり、過去3回の南海地震発生直前にも 地殻変動が起こっていたことを裏付けできる。
- 今後「異常潮位」を観測、キャッチすることにより次の南海地震は「直前予知」が可能となる。