9.爆破切断

9.爆破切断

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爆破切断の原理図  金属を成形する方法の一つに爆発の力を利用して、通常の方法では接合できない2種類の金属を圧接する爆着があります。爆発によって生じる圧力を集中させて単位面積当たりの圧力を増加させると切断(破壊)が出来ます。圧接の場合には、爆発圧力により2種類の金属が原子レベルで圧着し、接合面は一般に接触面お広い波状になり、接合強度は高くなります。同時に何種類もの金属を接合することが出来るため、構造強度や腐食耐性など異なる特性を持たせたい構造物、例えば高温で腐食性の物質を扱う化学プラントの金属配管の製造に用いられます。
 爆発切断は火薬の爆発力を利用して、単位面積当たりに作用するエネルギ密度を高めて、各種鋼材を切断する技術です。ダイナマイトなどの火薬の爆轟時に発生する衝撃的な爆発エネルギ(衝撃圧及び生成ガス圧)を切断したいところに集中させて、鋼板を破断します。単純に火薬を張り付けて爆破する場合には、破断面にクラック、マクレ等の変形が大きく生じ、切断とは程遠い文字通りの爆破或いは破壊活動となります。沈没船引き上げ作業のように、スクラップ回収のみを目的とする場合でも、破断面付近では再使用することが不可能な部分が多く発生しがちです。
 切断を可能な限り効率良く行うために、制御爆破切断法と言う手法が開発され、広く用いられるようになっています。これは火薬の爆発により発生する熱エネルギーを効率良く速度エネルギーに変換し、切断したい場所に集中して噴出させることが出来るよう、形状と燃焼速度を設計した成型火薬(爆薬)を用いています。これは1950年代に開発された一種の精密切断技術です。成型爆薬とは、爆薬に円錐形、あるいは、半球形などの凹型金属性ライナー(薄い金属の内張り)を挿入した爆薬でです。切断は、モンロー/ノイマン効果により進行します。爆薬を爆轟させると、爆発の衝撃波が円錐中心軸に向かって集中し、中心軸に沿って方向を変え、スリバチの上方に向かって超高速の金属の噴流(ジェット)が作られます。このジェットは、棒状に密接に固まり高速度で飛行する金属粒子群(6000-9000m/s)であり、加工材に衝突すると、加工材に深い孔があきます。鉛や銅などで作成したV字型の軟質金属管に、ペンスリットあるいはヘキソーゲンの心薬を詰めた成型炸薬は曲げ易く、対象物の構造に合わせて適切に添付出来る事から、広範囲にわたって利用されています79)。日常的なニュースなどでよく眼にする爆破切断は多段式ロケットの切り離し作業です。迅速且つ的確に多数の留め金をはずすのに欠かせない技術となっています。
 水中で使用する場合には、成型爆薬と加工材との間に水が侵入しないようにする必要があります。爆薬などの中にテフロンを混入し、ガスの膨張を有効に利用して金属粒子の衝突速度を切断に有利にさせた Pyronol Jet と言う方式も提案されています56,81)。成型爆薬を用いる切断では直線の切断から穿孔まで幅広く応用されています。水中で爆発切断をする場合には、衝撃の圧力が周囲に伝搬するために、作業員や構造物への影響を考慮する必要があり、爆破切断箇所の周囲に気泡でカーテンをつくり、その気泡で衝撃を吸収する手法も使われています。

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水中技術 目次
水中切断 目次
テルミット反応
酸化鉄と金属アルミニウムとの粉末混合物に着火すると、アルミは酸化鉄を還元しながら高温を発生します。
この還元性と高熱により生成した溶融鉄はアルミより重いので下部に沈降し、純粋な鉄となります。
この方法では炭素を使用しないため、生成した鉄内に炭素が含まれません。
3価の酸化鉄とアルミニウムの反応では、
Fe2O3+2Al=Al2O3+2Fe
+851.5kJ/mol
の熱が発生します。