冷え性

 
 1 冷え性のタイプ
 東洋医学では体質を重視して「証」を立てて治療します。同じ冷え性でも幾つかのタイプがあります。
さて、あなたはどのタイプ?
  @肝タイプ
冷え性は男性にも見られますが、圧倒的に女性に多いものです。これには理由があります。
東洋医学では「肝は血」に関係し、冷え性の原因の大半が血虚(血の不足)やオ血(全身を廻る血が滞った状態)によるためで「血」に関係していることが多いのです。
女性は生理や出産により、男性に比べて血の変動が起こりやすく冷え性になりやすいのです。

胃腸がエネルギー(気血)を作り出す工場として、肝は血を蓄えているタンクと考えてください。
胃腸で作られた血は、まず肝に蓄えれます。そして肉体労働で手足を使う時には、手足に血を送り出し、パソコンなどで頭や目を使うときは脳や目に必要な量の血を送って働かせます。又、全身を巡らすことで身体を温めています。
そして血は夜、タンクに戻り、眠たくなるのです。
この、タンクの働きが弱ると、充分な血を蓄えられなかったり(血虚)、
タンク内の血が熱を持ちドロドロと巡りが悪くなり(オ血)体調が崩れてきます。
 
※血虚の特徴
文字の通り血が少ないのです。つまり、血を蓄える力が弱いために血を集められず、必要なときに充分血を送り出せない状態と考えてください。
血が少ないために手足の先まで廻りにくいのでシモヤケができやすい。・生理痛・生理不順・生理中に便が軟らかくなり、下痢することもある(血と共に熱が抜けて冷えるために軟便になる)・食欲ないが食べたら食べられる(胃も冷えて働きが弱くなるが、胃そのもの悪くないので食べられる)。
このタイプの人は身体の中も外も冷えやすいので、温かくして身体を冷やさないように、人参などを煮た温かく血を増やすものを摂るとよいでしょう。
 
※オ血の特徴

血が熱を持ってドロドロと流が悪くなったり、どこかに停滞して血の流れを阻害している状態です。
血には熱エネルギーがありますから、停滞するとその部分だけ正常でない熱を持ちます。深い所で血が滞り熱を持って固まっていると考えてください。
正常なら全身を巡り身体を温めてくれる熱エネルギーが深い所で固まって動かないために、その他の部分、例えば手足や下半身が冷えてきます。
更年期に起こりやすく、冷えのぼせ・暑がりで寒がり・便秘傾向がある。
このタイプは中に熱がこもって、外が冷えているので、漢方薬が効果的です。
鍼灸では血を動かすような手技を用います。
適度な運動で気血の巡りを良くしてあげるのが健康の秘訣です。

 
  A脾タイプ
胃腸は飲食物をエネルギーに変える工場です。ここで作られたエネルギーは経絡という道を通って全身に巡るのですが、胃腸の働きが弱くて冷える人がいます。飮食物を消化吸収することにより、胃で陽気(熱エネルギー)が作られるのですが、働きが弱いと陽気の生産量が少ないので冷えるのです。
常に元気な人も冷飮食が過ぎると一時的にこのようになることもあります。

※脾タイプの特徴

食欲はなく食べられない・下痢して疲れる・手足がだるい。いずれも胃が冷えているためですので、このタイプの人は消化のいい温かいものを食べましょう。
お腹を温めるのが重要なポイントで、塩灸なども効果的です。
 
塩灸
塩灸は筒状の入れ物の底にガーゼを貼り、塩を入れて、その上でモグサを燃やしてお腹を温めます。
温度は、ほのかに温かい程度が丁度よく、熱すぎると体表面だけ温もって芯まで温もりませんし、低温火傷の恐れもありますので、熱く感じたらその時点で終了します。絶対に我慢しないことが大切です。
やり方
@塩灸にモグサを入れて火をつけて煙が収まるまで換気の良いところで待つ。
 煙が出ている間は塩が温もっていません。煙が出なくなってからジワジワ塩に熱が伝わります。
Aへその上にタオルを乗せ、塩灸を置く。安定するように周りをタオルで囲む。
B10分から15分ぐらいかけてゆっくり・じっくり腹の中が温まるようにする。
時々、塩灸をはずして皮膚の状態を確認する。※熱く感じたり、皮膚が赤くなっていたらその時点で終了!
 
 

B肺タイプ

胃で作られた陽気(熱エネルギー)は胸に上り、肺の働きによって全身に廻ります。
肺は気を全身に巡らすポンプの働きがあり、エネルギーを作る工場(胃腸)や貯蔵タンク(肝)がしっかりしていても、ポンプ役である肺の働きが弱いと体表を廻る気が少なくなり、皮膚の守りが弱く寒がりになります。
しっかり肺が働くことで、うまく気を循環させることで冷えにくくなります。

※特徴

肺の働きが弱くて寒がりの人は、体毛(うぶ毛)が多い、色白で皮膚のきめが細かく敏感・カゼをひきやすく鼻炎や扁桃腺が腫れやすい。
このタイプの人は適度な運動をして呼吸を盛んにしてあげると気血が良く廻るようになり、心身とも快調になります。
また、運動の苦手な方はカラオケがいいです。歌うことで肺がよく働き、気の廻りがよくなります。


C腎タイプ
腎は持って生まれた生命力(先天の元気)を宿しています。常に胃で作られたエネルギー(後天の元気)の補充を受けて生命力を高めています。
車で例えるならバッテリーの働きに近く、エンジンを動かすことでさらに充電しながら電気を蓄えています。
胃腸で作られた陽気は胸に上って背中のツボの通り道(経絡)から下半身に降りてきます。 
しかし、腎の働きが弱いと陽気は降りてこられません。そして足から冷えてきます。

※特徴
腰から下が冷えて元気がなくなり、精力も衰えます。
このタイプの人は足腰を冷やさないように、また無理な肉体労働(男性は房事=セックス)は避けましょう。
このタイプの冷え症の場合、まず胃腸の調子を整えるために、消化の良い温かい物を摂り、規則正しい生活を心がけて、腎の働きを高め、体力増強に努めましょう。

さて、あなたはどのタイプでしたか?
自分の体質を知り弱点を知っていれば、それを防ぎながら元気になれます。
 
 
 2 もう一つの万病のもと、寒・冷の邪気
カゼは万病のもとと言われます。しかし、もう一つ「寒・冷の邪気」もそうなのです。
東洋医学では、人は自然のサイクルと同じように、四季のサイクルと対応してプログラムされていると考えます。
つまり、夏には暑さに耐えれるように、冬には寒さに耐えれるようにできています。

ところが、近頃は生活が便利になり、1年中快適に暮らせるようになりました。
夏でもクーラーの効いた部屋にいれば快適ですし、スーパーに行けば旬の野菜が何だかわからないくらい多くの種類が並んでいます。

でも、身体は自然の法則通り変化していきます。
夏には熱がこもらないように毛穴が開き、汗と共に熱を発散し、冬は身体が冷えてしまわないように毛穴を閉じて守ります。ですから夏は暑さに強く、冬は寒さに強くなる訳です。

皆さん、冷房病って聞いたことあるでしょ?
夏の暑い時期にクーラーにあたりすぎて身体を冷やしすぎると、開いている毛穴から寒冷の邪気が身体の奥まで入り込みます。
特に足から入りやすく、腰まで冷えている人が多いようです。それ以上冷えてしまうと重い内臓の病気になりかねないので、身体は必死になって骨盤内までで冷えの進入をくい止めようとします。

腰や骨盤は冷えから身体を守る関所なのです。
特に女性は冷えに弱くすぐに症状を現します。それは骨盤内に子宮があり、血がたくさんあるからで、症状としては生理不順などの婦人科疾患、坐骨神経痛、膀胱炎などとしてあらわれます。
男性も油断は禁物!女性のようにすぐに症状は出にくいのですが、ある程度の年齢になると前立腺などにあらわれることがあります。
ご自分の体質を把握し弱点を知り、対処することを心がけれることが大切です。
 
 
 3 寒さに負けるな!自分で出来る冷え対策
寒さに負けないために簡単にできる方法を幾つかご紹介します。

@重ね履き

「今日はいつもより冷えるな〜」と思ったら靴下の重ね履き!ルーズソックスなんか最高。
また、ストッキングの重ね履きも効果的です。ただし、流行の部分的に締め付けるタイプは血行が悪くなる恐れがあるので気をつけましょう。

A使い捨てカイロ

重ね履きしても寒いなら「使い捨てカイロ」を重ね履きした靴下の間や土踏まずに忍ばせましょう。
「肝・脾タイプ」の人はお臍の所、「肺タイプ」で背中がゾクゾクする人は肩甲骨の間、「腎タイプ」で腰冷え冷えの人は腰にあてましょう。
でもくれぐれも火傷にご注意を!カイロでは低温火傷を起こしやすいので必ず下着や靴下の上から貼りましょう。
また、長時間同じ姿勢になる時は気をつけてください。就寝時は厳禁です。
カイロが1個しかない場合はポケットに入れて手を暖めるのもいいです。指先が温もれば身体も温もります。

B生姜(ショウガ)

生姜は胃腸を温める働きがとても強く、漢方薬にも使用されます。
寒いときやカゼをひいた時に、うどんやおみそ汁に少量いれますとお腹の中から暖まります。
私も寒いときはチューブ入り生姜を持ち歩いています。

C根野菜
生野菜や青汁は身体を冷やします。大根・人参などを煮て食べましょう。
根野菜を煮て食べることで体の中からじんわり暖まります。胃の中から優しく暖めるので「脾タイプ」はもちろんのこと、人参は血を増やす作用があるので「肝タイプ」にもお勧めです。
ある雑誌に「冷え症には青汁が効く」とありましたが、これは「肝のオ血タイプ」(中に熱がこもって外は冷えている)場合に効くのであって、他のタイプの冷え症には逆効果です。

D足湯・半身浴

足湯はとっても効果的!くるぶしの上までお湯に浸けていると、足先で温もった血液が全身を廻るころには少し汗ばむようになります。ポイントは湯加減(すぐに最初の温度に慣れますので、熱いめのお湯をたします)と先ほどの生姜を少し(チューブ入り生姜なら5センチほど)お湯に溶かすことです。
お湯から出たらよく水分を拭き取ってください。水分が残っているとかえって冷えます。
半身浴や腰湯も効果的です。気を付けることは掛け湯を肩までしないことです。お湯に浸かる所だけにして、浸からない部分は乾いたままでタオルをかけるか、シャツを着たままでもOKです。
身体全体がよく温もってから頭や身体を洗い、湯船に浸かりましょう。
お風呂から出たらよく水分を拭き取って、汗が引いたらすぐに布団に潜り込みます。
これが「暖まって気の廻りがいい状態を長引かせるコツ」です。
 
 
 4 冷え性対策のツボ

@足の三里 
胃経のツボ。胃腸の働きを助ける。別名長寿のツボ・健脚のツボ。
膝の下3寸(手の人差し指・中指・薬指・小指をそろえた幅)。
同側の手の親指と人差し指で膝のお皿を掴み、中指を伸ばして先端の当たるところ。
押さえると響くところ。
 
 
A三陰交 衝脉というツボの流れにあり、直接子宮に影響て養う。
また、字の如く肝・腎・脾のツボの流れがここで交わっている。
足のうちくるぶしで最も高いところの上3寸(手の人差し指・中指・薬指・小指をそろえた幅)で、骨の際、よく探ると骨の窪みがあり、押さえると痛い所。
 
 
B太衝 肝経のツボで血を増やす作用が強い  
足の甲の部分で、最も高くなっている骨の前。
第1指と第2指の骨の間にあり、骨の間を指先でさすり上げて行き、指の止まる所。
 
 
C血海 脾のツボの流れ。膝の上2寸。
反対の手の平で膝を包み親指のあたるところ。
もっとも響くところに取る。
 
 
D腎兪 膀胱のツボの流れ。お臍の高さで腰の背骨の外1寸半
 
 
E関元 別名「丹田」と呼ばれ元気を蔵するといわれる。お臍の下3寸に取る。