妊娠中期(24〜36週)
  
妊娠中期を迎えると、つわりなど妊娠初期にみられた不快な症状も軽くなり、精神的にも安定し、
  妊婦生活を楽しむ余裕が生まれてきます。
  胎盤も完成し、胎動を感じるなど赤ちゃんの存在を実感する時期でもあります。
  しかし一方で、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)や妊娠貧血などの合併症も起こりやすい時期でもあり、
  健診をきちんと受診して異常の早期発見をすることが重要です。
  この時期に起こりやすいマイナートラブルは   
  ・妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)
  ・腰痛
  ・おなかの痛み

 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)
  妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週以降から産後12週までに、高血圧やタンパク尿がみられる病気です。
  以前は妊娠中毒症ともいわれていました。
  
  西洋医学的に原因はよくわかっていません。
  妊娠による身体の変化に母体が適応しにくいため起こると考えられています。
  重症になると脳出血や心不全、けいれん発作など、お母さんの命にかかわります。
  胎盤機能も低下するため、赤ちゃんが育たなくなってり、亡くなることもあります。
  妊婦さんや産婦さんの5〜10%に起こり、妊娠中期から後期にかけて多くみられます。
  リスク要因は、高血圧や糖尿病、腎疾患などの持病、実母や姉妹が妊娠高血圧症候群であった。
  高齢出産、双子の妊娠肥満、痩せすぎ、喫煙、過労、ストレスなどといわれています。
  リスクのある方は、定期的に妊婦検診を受け血圧や尿検査の異常や赤ちゃんの発育状態をチェックすることが大切です。
  高血圧をともなう頭痛やめまい、むくみによる急な体重の増加(500g/週以上、2kg/月以上)、
  胎動を感じないなどの異常があれば、速やかに病院を受診しましょう。
  重症の場合や赤ちゃんの健康状態に問題があれば入院することになります。
  治療としては降圧剤による血圧コントロール、安静、食事療法がおこなわれます。
  これらの治療を続けても悪化する場合は、母体と赤ちゃんの安全を第一に考えて、
  帝王切開術で赤ちゃんを出すことが根本的な治療になります。
  妊娠高血圧症候群は、妊婦検診をきちんと受けて早期発見し、悪化を予防することがなにより大切です。
  
  東洋医学的に考えてみると、つわりは胃に伝わった熱が原因ですが、妊娠中毒症はさらに広範囲に熱が及んだことで
  発症します。
  胃に昇った熱が胸に迫ると高血圧になり、腎や膀胱に波及すると蛋白尿や浮腫になります。
  鍼灸では、胃腸や腎、膀胱の働きをよくし、胸に迫った熱を巡らせ症状の軽減をはかります。
  ただし、症状の重い場合は専門医への通院が必要です。
  
  新しい命とお母さんの健康にも影響することあるので、必ず医師の診察も受けながら鍼灸を続けることが
  望ましいでしょう。
  日常生活では、塩分を控えた食生活と体重コントロールが大切です。
  また、血圧が高めの方は毎日血圧を測りましょう。

 腰痛
  
マイナートラブルで最も多いのが腰痛です。腰からお尻〜大腿にかけて痛みます。
  特に妊娠中期からは、子宮が大きくなり、腹部が出て、重心が前に移ります。
  体重の増加もあり、背骨や腰の筋肉に大きな負担がかかるため腰痛が起こります。
  
  西洋医学的には、妊娠中に分泌されるエストロゲンなどのホルモンの影響で筋や骨盤のじん帯がゆるみやすくなり、
  支える力が落ちることも原因の一つになります。
  良い姿勢を心がけ、同じ姿勢で長時間過ごさないようにして症状の悪化を防ぎましょう。
  特に腰痛持ちの方は、妊娠の早い時期からコルセットをしたり無理な姿勢をとらないようにしましょう。

  東洋医学的には、肝が蔵している血の働きが弱くなり、腰の筋肉等に血が充分に巡らないために痛みが出たり、
  腎が蔵している水が少なくなり、血の流れが悪くなるために痛みが出たり、
  脾の働きが悪くなり、血を充分生成できなかったりすると、腰痛が起こりやすくなります。

  対処法
  立つときや歩くときは背骨をまっすぐにし、歩幅を広くした安定のある姿勢を心がけましょう。
  長時間の歩行は避け、同じ姿勢を長時間とらないようにすることが大切です。
  中腰にはならず、しゃがむときは一旦腰を落とす、椅子には深く腰掛ける、寝起きをするときは一度横向きになってから、
  次の動作に移るなども腰痛の予防になります。
  以上に加え、体重のコンロールを行い肥満を防ぐことがもっとも大切です。
  妊婦体操やストレッチを行い、日常から筋の血行をよくすることや、妊婦用の骨盤ベルトを締めて生活するのも効果的です。
  
 おなかの痛み
  
妊娠20週以降に、不規則な軽い子宮の収縮をおなかの痛みと感じるときがあります。
  また、妊娠初期・末期は便秘傾向になり、ガスがたまりやすく腸が動くときに痛みを生じるときがあります。
  妊娠後期には前陣痛とよばれる、大きな子宮の収縮が起こり、30週からはその回数も増えてきます。
  子宮の下部をのばし、赤ちゃんを生み出すための、お産の準備が始まります。
  安静にしてよくなる痛みは心配ありません。
  出血を伴う痛みや、安静にしていても規則のある痛みが強くなる場合は流産・早産のリスクがあるため、
  速やかに病院を受診してください。
  特に検診で子宮の頸管長(子宮の入り口)が短くなっているといわれた方は、すぐ受診してください。

  対処方法
  痛みが生じたらすぐに安静にし、横になったまま休息をとってください。
  ほとんどの場合は症状がよくなります。
  お腹にガスがたまったり、便秘になると張りやすくなります。
  ガスの生じやすいイモ類などの食べ物は避け、排便のコントロールをしましょう。