クリニカル・ガバナンス年末になるとマスコミなどで恒例となるのが「今年の十大事件」。今年後半はもっぱら「北朝鮮による拉致事件」関連のニュースで埋めつくされた感がある。しかし、もう一つ印象的だったのは"企業倫理"の問われるニュースが相次いだこと。BSEに係る牛肉偽装問題や、東京電力の原発トラブル隠しなどである。これらの事件に関連して、コーポレート・ガバナンス(企業統治)という言葉が語られもした。つまり、企業倫理や安全管理など、企業活動が一定の質を保つための経営のあり方を指していう。件の企業では、コーポレート・ガバナンスが破綻していたのである。
実はこのコーポレート・ガバナンスを医療界に応用したクリニカル・ガバナンス(臨床統治)という言葉がある。90年代英国のある病院で同種の医療事故が繰り返し起こされながらも、それが何年も放置され続けた事件が起き、クローズアップされるようになった概念だそうである。今年日本で起きた事件を例にとると、こうしたクリニカル・ガバナンスの破綻の典型例が、東京女子医大のカルテ改ざん事件と言えようか? 東電にせよ女子医大にせよ、体面にとらわれ、真実を闇に葬ろうとして、結局、内部告発に足元をすくわれたかの感がある。こうした落とし穴は、意外とわれわれの周りにも日常的に転がっているものである。
さて、わが防治会の「懲戒の基準」に、職員の処分が行われる例としてこうある。「病院の体面を汚した場合」。ここはむしろ、現代的な企業倫理の基準に照らすとするならば、次のように書き換えるべきなのではなかろうか?「患者の権利を損なった場合、もしくは患者の尊厳を傷つけるような言動を行った場合」。いかがなものか?