IZ-News 03年03月号より
覚えてほしい治験用語 ── GCP,IRB,SMO,CRC

ご存知の通り、当院では医療の本体業務(保険診療)と別に治験業務、つまり医薬品の開発に係る臨床研究業務にも力を入れている。今回はこの治験に関し、以下太字で示す4つの略語について、何としても皆さんに覚えてもらおうと思う。

まず新GCP。GCPとは「医薬品の臨床試験の実施基準」のことであり、旧GCPは一九九〇年に厚生省(当時)により定められた。その改訂版が新GCPで、制定されたのは九七年。特徴として「被験者保護の仕組が格段に強化された」ことがあげられる。その内容とは、文書によるインフォームド・コンセントの義務化や、製薬会社と医療機関との治験契約にあたっての治験審査委員会(IRB)での審議の義務化など数多く、いずれも患者の人権への配慮がその眼目である。ところが、このように患者の人権面が強化された新GCPがもたらしたものは、皮肉なことに治験実施数の激減、いわゆる「治験の空洞化」だった。有用な医薬品の開発は基本的に善であり、かつそのために治験というプロセスが欠かせないものである以上、これは大きな矛盾である。そうした、ある種の危機感を背景に、医療機関における治験業務の運営を支援するSMOと呼ばれる業者が近年数多く台頭し、SMOとタイアップして治験を行なう民間病院も増えてきた。当院もその例にもれない。また、右記のように、複雑・高度化した治験業務の中で、被験者や医師に対して様々なサポートを行う職種として治験コーディネーター(CRC)の重要性が増している。

さて、ここで唐突だが、わが防治会の設立理念について言及してみたい。
防治会が発足した当初の理念的バックボーンには、七〇年代の労働者・市民による労災職業病闘争や反公害・薬害闘争があった。当院の前身である四国勤労病院は当時、社会において生成する様々な健康被害に対して、医療の側から関わろうとしたのである。そしてその精神の根本にあったのは「患者の人権」であり、それは今のいずみの病院にも引き継がれている(cf.いずみの病院基本理念・患者の権利章典)。
筆者の私見だが、私はこのような理念を掲げてきた防治会だからこそ、患者(やボランティア)の人権に充分配慮した、あり得べき治験のモデルとなり、ビジネスとしても成果を上げ、もってわが国における治験の推進に貢献すべきだと考えている。

医薬品の開発や承認を巡っては、現在もイレッサの問題のようなことが起きているし、厚労省で新たに発足するとされている審査機関(医薬品医療機器総合機構)についても、そのあり方に批判的な目を向けている薬害被害者団体は少なくない。治験の現場は、担当者にとって常にその倫理的姿勢を問われるホットな現場であり、同時に「防治会らしさ」が問われる現場でもあると言えると思う。すべての職員がかかる問題意識を持ち、そして当院の治験業務を支えていただきたい。

新GCPGCPはGood Clinical Practice の略。新GCPは1997年に出された厚生省令で、正式には次の通り。「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年3月28日、厚生省令第28号)
IRBInstitutional Review Board の略。医療機関に設置される一種の倫理委員会。当院にも当然設置されており、委員には院外委員(弁護士・有識者等)もいる。
SMOSite Management Organization の略。通常、治験支援組織などと呼ばれる。
CRCClinical Research Coordinator の略。CRC独自の免許制度は現在まだなく、薬剤師、看護師などの免許取得者が多い。


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