IZ-News 04年04月号より
手術施設基準の変更と症例数の院内掲示

今年4月の診療報酬改訂の中で話題となったものの一つに、手術施設基準の変更がある。ご存知ない方のために簡単におさらいしておこう。

二年前の改訂で、比較的点数の高い一〇〇種類ほどの手術について、一定の症例数を実施していない医療機関は30%減額されるという仕組みが導入された。これが多くの医療機関の不評を呼び、今回の改訂で緩和されることになった。どう緩和されたかと言うと、一定の症例数を満たす医療機関は5%加算。症例数は満たさないが、その手術について10年以上の経験を有する常勤医がいれば減算なし。いなければ30%減算というもの。ところが、この改訂にはもう一つ、おかしなルールがくっついてきた。5%加算と減算なしの場合は施設基準の届出を行う必要があるが、この場合、その手術についての年間症例数が院内掲示されていなければだめだと言うのである。

患者さまがそうした情報で医療機関を選択する目安となるようにとの趣旨はわかる。症例数が多ければそれが良い病院か、という疑問もあるが、とりあえずそれもまずは良しとする。しかし、それでも、この院内掲示が今後、どう一般の患者さまに受け入れられていくか、はなはだ疑問なのだ。

何故かというと第一に、右記の通り、これら手術は手術全体のほんの一部であり、また比較的高点数のこともあり、当院程度の規模の病院では年一例とか二例というものが結構ある。症例数は満たさないが医師経験年数は満たすという基準に適合する場合、多くの病院でこのような一見しょぼい掲示となるだろう。つまり、せっかくの掲示が病院のマイナスイメージにつながりかねない。

第二に、掲示すべき手術が手術全体のほんの一部に片寄っていることから、その手術数は当該医療機関の手術の状況の全体を正確に反映するものではないと言うことができる。

第三に、こういった施設基準をそれなりであれ満たす医療機関は掲示を行うが、30%減算となるところは掲示を行わない。そうしたところでは、通常、患者さまには手術の症例数が多いとも少ないとも伝わらない。だから、この掲示のみで医療機関の手術機能を読み取り、しかも他施設と比較するためには、相当のリテラシーを要するのである。

院内掲示というメディアは、正確性を確保するためにやたら情報量を多くしても、読みづらくて誰も読んでくれないし、逆に意識的に読もうとしなくても目に飛び込んでくるから、その内容理解(というか、医療機関についての印象の形成)は患者さまによって、ゆらぎが相当あると考えなければならない。こうなると、症例数についての情報提供は、もっと別のかたちがあってもよさそうな感じがする。例えばICDのような国際標準の手術分類コードでつくった手術数一覧表(医療機関のすべての手術を網羅したもの)をパンフレットやホームページに公開することで掲示に代えることができるとかである。でなければ、中途半端に掲示した症例数の数字が一人歩きし、病院の間違ったイメージをふりまきかねない。


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