福知山線脱線事故に思う107人の死者を出す大惨事となったJR福知山線の脱線事故。国土交通省事故調査委員会のこれまでの調査によると、事故の直接の主因はやはり運転士によるスピードの出し過ぎにあるようだ。だが、ニュースなどで伝えられる様々な情報を総合すると、浮かび上がってくる事故の本当の主因は、「安全文化の不在」、ととらえるのが妥当なようだ。
同路線の運転士には、常日頃から定時運行遵守の強いプレッシャーがかけられており、今回の事故を起こした運転士も、事故の直前、運行の遅れを取り戻そうと、通常を大きく上回るスピードを出していたことが明らかになっている。程度の差はどうあれ、これに類したことが日常的に発生していなかったかどうか? 決められた業務遂行のための帳尻合わせのために安全性を軽視する職場風土が存在している可能性が示唆される。
また、今回の事故の場合、現場付近に新型ATS(列車自動停止装置)や脱線防止ガードが取り付けてあれば、事故は防げたかもしれないと言われている。たとえヒューマンエラーが起きても、それを事故につなげないための仕組である。こうした装置導入の遅れもまた、安全に最大限の価値をおく「安全文化」がJR西日本という企業に醸成されていなかったことのあらわれの1つとみなされ、同社は現在、社会の厳しい批判にさらされている。
このように、今回の事故は、企業における安全文化の重要性をあらためて私たちに投げかけたと言える。これは当然、医療界にもそのまま当てはまる。当院の場合、一昨年4月の院長声明「安全文化の確立に向けて」が今も職員の行動指針として有効である。これを機会に、再度読み直していただきたい。