MRSA保菌者への入所忌避以下は今から3年前、2002年2月発行の日本医師会雑誌掲載の記事からの引用である。
MRSAが市中に広がる一方で、医療裁判などを通じてMRSAの名前が世間一般にも認知されるようになってきた。マスコミなどでもMRSAは即、院内感染として報道されていることが多い。このため、MRSA感染症はいざ知らず、MRSA保菌者は老人保健施設、療養型病床群、特別養護老人ホームなどの高齢者療養施設、リハビリテーション病院などから入所を断られるという事態が引き起こされている。(略)入所時のMRSAチェックとそれに基づいた入所制限が一部の施設で日常化している。これは患者側の不利益のみならず、一般病院の患者回転にも大きな支障となっている。今後DRG/PPSの導入によって、病院経営の母体を揺るがしかねない事態となろう。……(1)臨床的なサーベイランスで、急性期疾患の病院ではMRSA感染症の発症者がいますが、老人ホームや外来ではほとんど経験されません。それにもかかわらず、MRSAの保菌者が厳しい生活制限や施設利用の制限を受けています。ハンセン病の差別の問題がさんざん騒がれましたが、それと全く同じことが行われています。MRSAは特殊な宿主にとっては危険なものですが、普通の患者さんにとっては特に不都合なことはなく、どんどん広がって危険になるわけでもありません。MRSA保菌を理由とした施設利用からの排除は行ってはいけないことだと思います。……(2)
これらの記事から3年あまり経ったわけだが、事態はさほど改善されていないのではないだろうか? 右記のようなMRSA保菌者の入所忌避は高知でも以前聞いたことがあるが、少なくとも改善されたという話は聞かない。先月、高知市保健所主催の病院事務長会があったので、その場で改めて保健所に対し、病院・施設へのこの件に関する適切な指導をお願いした。
折しも今月23日、高知市内で「ハンセン病を正しく理解するフォーラム」が開かれる。MRSA保菌者への処遇で、かつてハンセン病患者にしたのと同じ過ちを繰り返さないためにも、ハンセン病患者への差別・隔離に医療者が率先して加担してきた過去の歴史を振り返ることは意義があるかもしれない。(1):MRSA/各種耐性菌の現状と対策(菊池 賢) (2):[鼎談]院内感染対策をめぐって(池田 康夫・稲松 孝思・木村 哲)