IZ-News 07年01月号より
当事者主権

2003年出版の岩波新書「当事者主権」という本は、次のような書き出しで始まる。

いま、障害者、女性、高齢者、患者、不登校者、そしてひきこもりや精神障害者の当事者などが元気である。(中略)当事者を担い手としたユニークな活力あふれる活動が生まれ、社会に大きな影響を与えつつある。

「患っているもの」という意味の患者が元気だとは、何とも矛盾するような、妙な文章だ。だが、その謎はすぐ解けた。つまりこのくだりには元歌があるのである。「一つの妖怪がヨーロッパにあらわれている、――共産主義の妖怪が」で始まる共産党宣言(マルクス=エンゲルス)だ。どちらもニューウェーブの到来を告げる、ときの声といった趣の一文である。これが見当外れでないことは、両者の結びの文を比べて見れば鮮明に分かる。

万国のプロレタリア団結せよ!(共産党宣言)
全世界の当事者よ、連帯せよ。(当事者主権)

と、こんな紹介の仕方をしたら、どんなゴリゴリの本か、と思われてしまうかもしれない。が、ご安心を。そんな本ではない。実に示唆に富む好著だ。
で、われわれ病院との関連で言えば、やはり問題となるのは患者―医療者関係のあり方だろう。従来社会的弱者と見られてきた患者だが、近年よく聞かれるようになってきた「患者が医療の主人公」「インフォームド・チョイス(コンセント)」「エンパワーメント」といった言葉の背後の一角には、たしかにこうした「力強い」当事者主権の考え方が押し寄せつつあるという背景があるのだろう。

われわれとすれば、かかる思潮を理解しつつ、患者との良好なパートナーシップについて考え、実践していく作業が必要だ。本書のご一読をお勧めする。


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