和田毅投手立春が過ぎ、各地でのプロ野球キャンプの動向なども聞かれるようになると、そろそろ野球のシーズンだなと感じる。日本人プロ野球選手の米メジャーリーグ挑戦の話題もしきりとなるが、今年の話題の中心は何といってもダルビッシュ投手だ。だが私がダルビッシュ投手以上に注目しているのは、元ソフトバンクの和田投手である。それも、彼の投球以上に、彼がマウンドに向かう時の仕種の方に注目している。
和田投手はマウンドに上がる時、いつも丁寧にお辞儀する。その様子は「とてもお行儀の良い好青年」という風情だ。私の知る限り、彼のような独特の印象を持つピッチャーは他にいない。私が注目しているのは、彼のあの仕種が米社会からどのように受けとめられるかだ。単なる個人の癖とかジンクスのようなものと看做されるか、もしくは「東洋流の礼の精神の体現」などと看做されるのか……。
日本人プロ野球選手の仕種が、メジャーに渡ったさいに注目された例は過去にもあった。イチローが米球界に登場した当初、彼がバッターボックス上でバットを立てて構え、相手投手に向けてかざすあの仕種が相手投手を挑発する行為であり、失礼なのではないかと指摘する声があった。だがイチローが自分のスタイルを変えることはなく、彼のあの仕種は瞬く間に受容された。あの仕種は彼のスタイルの象徴として、今ではむしろ好意的に受けとめられているようだ。
さて。スポーツと礼儀といえば、いま気になっているのは、今年4月から中学校で始まる武道の必修化だ。何でも、礼儀の習得のためにというのが、必修化の理由のひとつでもあるらしい。だが、私が思うに、礼儀の習得にせよ何の習得にせよ、武道と他のスポーツとの間にさしたる差などないように思う。ことさらに武道を重んじるのは、「日本古来」とか「ニッポン」という「記号」に何か特別の値打ちを付けたがる輩の助平根性のようなものに感じられてしょうがない。
が、そんなことはどうでも良い。和田投手があのお辞儀と玄人好みのするピッチングで、彼の地に爽やかな風を吹かせてくれることをただ期待するのみである。