IZ-News 12年07月号より
花見登山

山が好きで年に何度か山に入っている。ここ1〜2年は、花を見ることが主目的の山行、つまり花見登山が多くなっている。以前から秋になると山の紅葉が見たくてそわそわしたものだが、近頃はそれに花が加わった。

四国山地のある程度の高さの山で見られるお馴染みの花というと、春はアケボノツツジやミツバツツジ、夏はシコクフウロにホソバノヤマハハコ。秋口から見られるシコクブシ(トリカブト)なども良い。中でも私のお気に入りはシコクフウロ。可憐な花に、また四国風露という名前が何ともいえぬ風情を醸し出している。夏が来て山道でシコクフウロに出会うと「今年も会えたね!」と挨拶がしたくなる。まるで七夕の牽牛と織女だ。もっとも、当方の単なる片想いに過ぎないのだが……。

また、ごく限られた山域でしか見ることのできない希少な花もある。代表的なところではキレンゲショウマ、オオヤマレンゲなど。今月はそのオオヤマレンゲに会いに、剣山系の高ノ瀬に登った。登山口まで車で片道約2時間。そこからさらに3時間近く山道を歩いた先に、その自生地がある。たかが花に出会いにいくのになぜそこまでするか? 関心のない人からすると、実に阿呆らしく見えるだろう。

だが、高山で自生するこのような花には、ここでしか見られないという独特の魅力がある。多くは、氷河期を含む数千〜数万年単位の環境変化の中で、数々の偶然や必然の末、わずかに残ったこの場所に適応し、細々と、しかし力強く生を繋いできている植物たちである。彼らが「ここにいる」ことの意味は、そこらへんの栽培種などとは訳が違う。彼らとの山での出会いは、実に壮大な一期一会だ、と言っても、決して大袈裟ではない。

出会いのたびにこのような感慨にとらわれ、そして季節が変わると、また次なる一期一会を求め、山に分け入りたくなるのである。


参考)デジカメ山行記


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