IZUMINO-izm 12年12月号より
赤本と新赤本

赤本と呼ばれ、長年にわたって売れ続けている本がある。といっても、大学入試用問題集のことではない。ご存知の方も多いだろう。日野原重明著「POS――医療と医学教育の革新のための新しいシステム」のことである。今年100歳を迎えた日野原氏が、今から39年前の1973年に著した書である。真っ赤な表紙に大きくPOSと記した同書は、日本にPOS(Problem-oriented System、問題指向型システム)を紹介した記念碑的な本。日野原氏は同書の中でこう述べている。

「私は日本の医学界が中世紀的な長年使い慣れた雑記帳式の古いチャートシステムからProblem Oriented Systemという新しいシステムに早く改宗することが、医療担当者がひとしく理解できる様式と言葉で書かれた整理された情報資源の集録にこのチャートを変えるということ、そしてこれにより患者の問題点を患者の全体像の中に捕え、ガラス張りの中での合理的なplanningの中で患者を治療し、また医師自身と医療担当者と患者とを教育することがなされなければならないと思う。」
わが国の診療録の現状を見るに、日野原氏が提唱した理想は、39年経った今も、実現にはまだまだ至っていないように感じる。

さて、そんな中、今年になって新赤本とでも言うべき本が出た。赤本とそっくりの装丁。渡辺直著「電子カルテ時代のPOS」である。この本は今年の日本POS医療学会・日野原百寿記念大会に合わせて出版され、監修者の日野原氏自身が前著の「実質的な改訂版」との評価を与えている。書名にある通り、電子カルテ、そして医療連携、チーム医療などといったキーワードで語られる現代の医療の中で、改めてPOSおよび診療記録のあり方について述べた書となっている。

本書でひとつ注目されるのは、本書が退院サマリとその質的監査をとくに重要視していることだ。とても共感できるので、引用しておこう。

「質的監査が日常的に、綿密に行われている施設こそ、真に教育的な、医療向上性に指向した、そして最終的には患者にとって最も有益な情報を提供できる医療機関であるといえましょう。」
本書が多くの方に読まれることを期待したい。

※渡辺直:電子カルテ時代のPOS――患者指向の連携医療を推進するために、医学書院、2012年


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