石の綿 ―― マンガで読むアスベスト問題*1湧水は今回も書籍の紹介。しかし、今回はマンガである。
2005年6月、兵庫県尼崎市のクボタ神崎工場とその近隣で、中皮腫などアスベスト関連疾患によって多数の従業員と近隣住民が死亡していたことが明らかとなった。いわゆる"クボタショック"である。以来、アスベスト(石綿)による健康被害がマスコミ等で大きく取り上げられるようになった。その後、石綿被害者救済法が成立するなど、政府の対策に一定の前進は見られたが、やがてマスコミ報道は沈静化し、今ではアスベスト問題に対する社会の関心もすっかり薄らいでしまった感がある。だが、発症までの潜伏期間が40年(中皮腫の場合)と言われるアスベスト関連疾患の被害が本格化するのはむしろこれからである。近い将来、アスベスト関連疾患による年間死亡数は、交通事故による死亡数を超えるかもしれない*2。また、アスベストによる被害の中心はアスベスト曝露機会の多い労働者だが、建材などに使用されているアスベストが環境中に飛散し、一般人が被災・発病するリスクもある。
このように重大で、しかも複雑なアスベスト問題を、マンガという手法で実に分かりやすく説明することに成功しているのが本書だ。本書は9章からなり、「クボタショック」「泉南」などのドキュメンタリー、インタビューに基づくフィクション、実話の脚色、「アスベストの説明」など説明のためにマンガ的演出を凝らしたものなど、各章の内容は多彩だ。制作は神戸大学と京都精華大学の学生・院生らによるプロジェクト。なかなか天晴れな仕事である。
*1)神戸大倫理創成プロジェクト・京都精華大機能マンガ研究プロジェクト:石の綿 ―― マンガで読むアスベスト問題、かもがわ出版、2012年
*2)大島秀利:アスベスト ―― 広がる被害、岩波新書、2011年