IZUMINO-izm 15年12月号より
老年医学の巨人

ご存じの方が多いと思う。私はつい最近、この言葉を知った。老年医学の巨人(ジェリアトリック・ジャイアンツ;Geriatric giants)。高齢者に多い問題の中で、特に頻度・影響の大きい「物忘れ」「抑うつ」「尿失禁」「転倒」「移動困難」などを指してこう呼ぶ。これらは、高齢者の多くに普通に見られる問題であること、原因が多岐にわたり治癒が困難であること、生活への悪影響が大きいこと、といった特徴が共通している。また、各々の問題が相互に関連している場合がある。たとえば、尿漏れ→尿漏れが心配→抑うつや外出控え→筋力低下→転倒、という具合。一方、早期認識と適切な対応によって生活予後改善と家族負担軽減が可能であり、「介入しがいのある問題」であるとも言われている。

そんなことはみんな知っている、それがどうした、と言われそうだ。だが、臓器別に細分化されがちな病院医療の中では、案外と見過ごされてしまいがちなのではないだろうか? 私が最近読んだ本では、例えば訪問診療のように、虚弱高齢者の生活に密着した診療の記録においては、患者の包括的な情報を書き込み、全体像を一望できるカルテ記載の「型」として、Geriatric giantsを含む項目が簡潔に記載できるようなフォーマット(テンプレートのようなもの)を作り、定期的に確認することを推奨している。

地域包括ケアの構築がさかんに叫ばれるこんにち、病院医療といえども地域とのスムーズな連携が重要視されている。このような局面では「治療モデル」一辺倒では不十分であり、「生活モデル」にもとづくケアが必要だとも指摘されている。となると、単なる疾患にとどまらない高齢者の包括的な問題を過不足なく把握し、チームで効率よく情報共有するカルテなどの仕掛けは、病院にとってかなり重要なテーマになり得そうだ。そんなことも今後検討していけたらと、いま考えている。

佐藤健太:「型」が身につくカルテの書き方、2015年、医学書院


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