風に吹かれて今年のノーベル文学賞はボブ・ディランに決まった。ポップミュージシャンの文学賞受賞は人々に驚きをもって迎えられたが、彼の詩の素晴らしさは広く認められているところでもある。そのせいもあるだろうが、彼の曲は、多くのアーティストによってカバーされている。そうした彼の曲のカバー・バージョンの中で、私のお薦めは次の2作品である。
1曲目は、RCサクセションの「風に吹かれて」※1。日本語の訳詞が秀逸で、かのフォークの名曲は、見事な日本語ロックになっている。この曲が収録されているアルバム「カバーズ」は、他の収録作品中で原発問題が歌われたせいで発売中止騒動が起き、その後2011年の福島原発事故で再注目されたことでも話題となったが、私は本アルバムの白眉はジョン・レノンの「イマジン」と並んで、ディランの「風に吹かれて」だと思っている。
そして2曲目は、トム・ロビンソン・バンドの「アイ・シャル・ビー・リリースト」※2。トム・ロビンソンのシャウト気味のボーカルと、ダニー・カストウのギターがしびれる。トム・ロビンソンは、自らゲイとカミングアウトして音楽活動を行った英国ロックミュージシャンの草分け的存在として有名だ。なので、彼が「いつかきっと、私は解き放たれる(アイ・シャル・ビー・リリースト)!」とシャウトするとき、聴衆の心にはLGBT※3解放を希求する彼の切実なメッセージとして響くことになる。
紹介した2曲とも、YouTubeで聴くことができる。ぜひご試聴あれ。
※1)風に吹かれて:RCサクセション、アルバム「カバーズ」(キティレコード、1988年)収録
※2)アイ・シャル・ビー・リリースト:トム・ロビンソン・バンド、1978年リリース、ベストアルバム「ライジング・フリー」(EMI、2002年)に再収録
※3)LGBT:性的少数者の意。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を並べたもの。