IZUMINO-izm 17年02月号より
介護のススメ!

ハルキストというと普通、小説家の村上春樹に心酔する人たちを指す。だが、こちらのハルキストも医療-介護界ではちょっとした勢力らしい(?)。三好春樹(1950年〜)の影響を受け、実践しようとする医療-介護従事者たちのことである。三好氏が特養の介護職員として働き始めたのは1974年。その後、理学療法士となり、介護現場で老人のリハビリに従事。以来、現在にいたるまで「生活リハビリ」の提唱者として活発に活動されている。

私が初めて三好氏を知ったのは1980年代半ば頃。何かの書籍の中でふと目にした氏の文章だった。そこにはたしか、自身の老人介護の実践を、著明な哲学者イヴァン・イリイチによる医療批判-専門家権力批判の問題提起に応えるものであると書いていた。医療-介護界にこんな人がいるのかと驚いていたら、その後三好氏は「オムツのファッションショー」、次いで「オムツ外し学会」呼びかけと、次々と話題を呼ぶ企画をつくり出していった。著書も多数ある。当院2F図書室にも、私が購読後寄贈した本が4冊置いてある。

先日、書店に氏の新刊「介護のススメ!」が並んでいるのを目にし、久しぶりに購入して読んだ。この本はおそらく中高生あたりを読者としてターゲットに想定しているのだろう。難しい哲学者の名前などは一切出さず、とても読みやすく書かれている。そして氏自身のライフヒストリーを交え、老人介護の魅力を語る「介護職へのいざない」といった趣の本だ。

本書を読み、改めて思ったのだが、すぐれた介護施設は、入所者のQOLを重視し入所者の人生に寄り添う姿勢と実践にかけては、おそらく平均的な医療施設よりも先を進んでいる。地域包括ケアシステム構築が喧伝され、認知症ケアの重要性も強調される今、医療が介護から学ぶべきことは、案外と多そうな気がする。


イヴァン・イリイチ(1926−2002):
オーストリア生まれの哲学者、社会評論家、文明批評家。現代産業社会批判で知られる。「脱学校の社会」「脱病院化社会」などの著作多数。


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