IZUMINO-izm 17年03月号より
偉大なるワンパターン

今からおそらく十数年ほど前、何気なくTVを観ていた時、TV画面に映った出演者の1人が口にした「偉大なるワンパターン」という言葉が心に残っている。あれはたしか、ベンポスタ子ども共和国を紹介した番組だったと思う。同共和国の設立者ヘスス・シルバ・メンデス神父は、事あるごとに同共和国設立の理念を語る人だったと、そんな話だったように思う。シルバ神父の演説の内容はいつも決まっていて、子供たちはなかば食傷気味だったとか。だが、食傷気味になるほど繰り返し聴かされることで、理念はたしかに同共和国の中に根づいていったんだろう。ベンポスタの経済収入のかなりの部分を賄ったといわれるサーカスでも、公演の最後に演じられる「人間ピラミッド」によって「強い者は下に、弱い者は上に、子どもはてっぺんに」というベンポスタの理念が表現されたという。

さて、ここからは私の想像なのだが、シルバ神父の演説というのは、いくらワンパターンだといっても、いつも同じようにただ同じスローガンを叫ぶだけのものではなかったんじゃないだろうか? かの水戸黄門だって、最後は決まって大立ち回りの末、印籠が差し出される超ワンパターンとはいえ、毎回登場する悪役と悪事は個別具体的である。その個別具体性の上に、決まって勧善懲悪のパターン化された物語が繰り返されるのだ。シルバ神父も同じように、具体的な例を交えながら、結論はいつも同じ理念に帰結するというパターンではなかったか? ただの「ワンパターン」に「偉大なる」という形容詞が与えられるゆえんはそのあたりにあるのではないか?


今年の院長の新年挨拶で「5つの目標」が提起された。その第一が「理念に基づいた言動」である。だが、スローガンがスローガンのまま繰り返されるだけなら、何の意味もない。われわれの日常の個別具体的なふるまいや行動を、理念と関連づけながら行動変容へと導いていく必要がある。

例としてひとつだけ挙げよう。当院の基本理念の一つに「説明・納得・同意」がある。ならば、入院診療計画、病状説明、手術等に係る説明と同意など、これらプロセスに関わっているスタッフは自らの日々の実践について今いちど見直し、必要であれば書式やシステムの見直しを検討する。それを具体的行動計画として策定、実施する。理念具現化のプログラムを絶えず走らせる。おそらく無数のこうした取り組みの末、当院の理念がただの「お題目」から「偉大なるワンパターン」へと昇格する日がやってくるのだろう。


ベンポスタ子ども共和国:
ヘスス・シルバ・メンデス神父が、1956年に自分の生まれた町、スペインのオレンセの町の貧しく、教育も受けず、職もない青少年たちのための自立支援の共同体として設立したもの。子ども共和国の名の通り、あたかも子どもたちによる一個の独立国のように運営がなされた(独自通貨も発行されたという)。


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