IZUMINO-izm 18年02月号より
感情労働

感情労働という言葉をご存じだろうか? 米国の社会学者アーリー・ホックシールドは、感情労働を「外的に観察可能な表情や身振りを作るための感覚の管理」と定義しているが、いまいち分かりづらい。Wikipediaにあった次の説明を見ると、何となくピンとくるかもしれない。

感情労働に従事する者は、たとえ相手の一方的な誤解や失念、無知、無礼、怒りや気分、腹いせや悪意、嫌がらせによる理不尽かつ非常識、非礼な要求、主張であっても、自分の感情を押し殺し、決して表には出さず、常に礼儀正しく明朗快活にふるまい、相手の言い分をじっくり聴き、的確な対応、処理、サービスを提供し、相手に対策を助言しなければならない。
そして、同記事はこうも書いている。
相手に尊厳の無償の明け渡しを半ば強制される、健全とは言いがたい精神的な主従関係や軽度の隷属関係の強要、と。

わが国では、モンスター○○などという具合に、「横暴な顧客」という文脈で語られることはよくあるが、そうした顧客の対応にあたる労働者の心の健康の問題は、社会的な課題にはなり得ていない感がある。それに比べ、隣国韓国の対策は数段進んでいるらしい。

韓国職業能力開発院が行った調査(2013年)が興味深い。感情労働者の現状を質問用紙で調査したものだ。ストレス度の最高点は5点。そして、ストレス度の高い職業のベスト30が発表されている(→ 下表)。保健・医療関連の職業も、多くこの中に入っている。韓国と日本の社会的背景の違いはもちろんあるが、共通する部分もおそらくあるだろう。かの国の対策に学ぶべき点が多くありそうな気がする。


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