憲法的価値私自身にとって、日々仕事をしていく上でのモチベーションの核って何だろう? このように自問自答することが時々ある。こんな時、私の場合、近頃決まって思い浮かぶ答えは「憲法的価値の擁護」である。ことに、日本国憲法が謳う基本的人権に対する軽視や無理解が、わが国の政権与党に属する政治家の言動の中に目立つ昨今、憲法的価値を擁護、実現するためにはわれわれ1人1人の闘いが欠かせないという思いが強いからだ。憲法第12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と述べている。
具体的にはこうだ。当院で私が担当している個人情報保護の考え方の核には自己情報コントロール権があるが、憲法に即していえば、これは第13条で定める幸福追求権に含まれる。また、QI/CIなど医療の質計測/改善活動は、患者が良質な医療を求める幸福追求権はもとより、生存権(=健康で文化的な最低限度の生活を営む権利;憲法第25条)とも関わりがある。さらに、私の日々の労働時間の大半は病院経営の持続可能性の維持向上努力に振り向けられているが、医療の公共性を考えると、そもそも病院が健全に存続し、医療サービスを提供し続けること自体が、地域住民の生存権、幸福追求権に関わる。だから、病院の経営を守るということは、ただ単に一組織の経営を守ることにとどまらず、地域住民の受療権を守る、すなわち彼らの生存権、幸福追求権に寄与するということなのだ。
そして、現憲法は、第11条において、こうした基本的人権に対し「侵すことのできない永久の権利」として、至高の価値を与えている。かつての明治憲法が個人よりも天皇-国家を優先させるものだったのと、大きく異なる点だ。ところが、戦後70年あまりをへて、ここのところ、旧憲法体制への逆コースを目指すかの動きが目立つ。政権トップ自らが改憲に前のめりだ。私が大事に思っている(現)憲法的価値が脅かされているのではないかと危惧されてならない。皆さん、どう思われますか?