政策ドリフトと共生保障さいきん、宮本太郎著「共生保障」1)を読んだ。同書は、氏の前著「生活保障」2)の続編にあたる。生活保障じたい、就労支援といった雇用施策等を含め、従来の社会保障を拡張させた概念/理念なのだが、今回の共生保障は、それをさらに一歩進める概念/理念であり、とても興味深く読めた。
ところで、同書中、少々気になる箇所があった。政策ドリフトのことである。政策ドリフトとは、同書によれば、ある政策が、投入された社会的文脈のなかで、当初の狙いとは別の機能を果たすようになることを指す。ぶっちゃけて言えば、良い制度を新たに作っても、社会的経済的状況の中で、その制度が良からぬものに転化する場合がある、ということだ。
で、氏が言っているのは、次のような状況のことである。介護保険制度創設をはじめとする社会保障の「普遍主義的改革」は、近年のわが国における格差拡大、雇用の劣化、高齢者の困窮化進行といった状況の中で政策ドリフトが起き、低所得者層をサービスから排除する傾向が生じている、と。いわゆる介護難民、療養難民についての懸念なども、その一端だろう。
さて、ならば、介護保険制度創設に尽力した故五島前会長などからすれば、この現状はけっして本意ではあるまい。
宮本氏は、こうした現状の打開策として、共生保障のビジョンの実現を主張している。詳細は同書を読んでいただきたいが、その一部は、地域限定の「好事例」にとどまってはいるものの、すでに始まっている(下図参照)。数々紹介されている中には、共生型ケアの例として本県の「あったかふれあいセンター事業」なども含まれている。また、共生保障を進めるための体制として、相談、支援プラン、さらにはケアサービスそのものの包括化が取り上げられている。
これら様々な官民の取り組みに対し、現場のわれわれはどのように向き合うべきか。皆さんとともにじっくりと考えていきたい。
1) 宮本太郎:共生保障 ―― <支え合い>の戦略、岩波新書、2017年
2) 宮本太郎:生活保障 ―― 排除しない社会へ、岩波新書、2009年
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