IZUMINO-izm 19年03月号より
ひとはみな宇宙人

われわれはどこから来たのか、そしてどこへ行くのか? この哲学的な問い、とりあえず前者の問いに対し、元素レベルで考えると、次のように答えることができる。われわれ地球上の生きものはみな、太陽系外の宇宙からやってきた、と。

なぜならば、われわれの体の約97%は水素、酸素、炭素、窒素の4元素でできている。さらにリン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩素、硫黄を加えた11元素で99%以上となる。一方、全ての元素は水素(原子番号1、以下、括弧内は原子番号)から核融合によって生成するが、太陽はせいぜいヘリウム(2)までしかつくり出すことができないからだ。

太陽より大きい恒星は、内部の核融合反応によってより原子番号の大きい元素をつくり出すことができるが、いくら大きな恒星でも、通常の核融合反応で生成できるのは鉄(26)までが限界だ。では、鉄よりも重い元素はどうしてできるのか? それは、ひとつには恒星がその一生を終えるときに起こる。大きな恒星は、一生の最後に超新星爆発(スーパーノヴァ)を起こす。規模の大きなタイプの超新星爆発では、爆発の過程で巨大な重力が生まれることにより鉄より重い重金属が発生し、宇宙空間にばらまかれる。しかしそれでも、この現象によってできるのは鉛(82)まで。より重いウラン(92)などの放射性元素や、原子番号は鉛より小さくても、このメカニズムでは生成されない金(79)、銀(47)、プラチナ(78)などの貴金属は、どこでどのようにしてできるのか、実はまだよく分かっていない。

いずれにせよ、われわれが住み、われわれ自身のからだを構成する地球の物質世界を作り出したのは、超新星爆発を含むはるか彼方の宇宙の営みなのだ。この壮大さに比べれば、人類の歴史などほんの一瞬の出来事に過ぎない。ましてわれわれヒトひとりひとりの一生の時間など……。だが、とはいえ、その一瞬の一瞬とは、ひとりひとりにとってとてもかけがえのない一瞬なのではある。


参考)渡邉泉:いのちと重金属 ―― 人と地球の長い物語、ちくまプリマー新書、2013年

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