大衆路線今年の年末、私は定年を迎える。継続雇用制度の適用を受ける予定であり、この「湧水」もおそらくまだもう少し続く予定ではある。だが、とはいえ、ひとつの節目であることは間違いない。なので12月までのあと三回は、私がこれまでの仕事のやり方として、大切にしてきたことについて書こうと思う。
一回目の今回は「大衆路線」。私は常々、病院の運営や様々なプロジェクトの遂行にあたっては、いかに大勢の職員の力を結集するか考えることにしている。病院の理念や戦略、情報や問題意識を職員間で共有し、ともに考えて事にあたっていく。そのために当院開院以来、私はこれまでに何百何千とレジメ、計画書、報告書や同報メールなどを書いてきた。この湧水もその一環といえる。これを社会運動系の言葉でいうと、「大衆路線」ということになる。
左の写真の本※(略)は、私が学生時代、社会運動系サークルにいた時に出会った本で、組織論、運動論のテキストとして参照していた。だが、ここに書かれていることは、病院のような組織のマネジメントにも使える。事実、病院マネジメントにあたっての私の発想のかなりの部分は、この本から来ている。ようするに私は学生の頃から40年ほど、ずっと同じこと(=工作活動)を同じ感覚でやっているのである。
本書の各章の見出しは、例えば次のようになっている。どのようにして工作計画をたてるか、どのようにして一般的な呼びかけと個別指導とをむすびつけるか、どのようにして工作の中心の環を掌握するか、どのようにして決議の実施程度を点検するか、どのようにして幹部を団結させ教育するか、どのようにして工作の総括をおこなうか、等々。この本に書いてあることは、今風にいえば、PDCAとか、エビデンス・ベースド(本書では「実事求是」という)といったことどもである。
例えば、総括について。総括はPDCAの1クールで一回やり、それで終わり、ではいけないと、本書は次のように述べる。
工作を総括し、報告し、討論したのち、つねに、総括のなかで指摘された問題をくりかえし考え、実際の工作の発展の進度にむすびつけ、総括の正確な精神を、工作の具体的情況の変化発展のなかに、生き生きとつらぬかなければならない。また、同時に、工作の発展による新しい経験によって、もとの総括を充実させ、豊かにし、誤ちを正さなければならないのである。このように、つぎつぎに充実し、つぎつぎに完璧な正確なものにちかづけ、今日の総括を、明日の新しい工作計画に生かしてゆく。同時にまた、明日の新しい工作計画を、さらに、いくつかの他の経験にもとづいて、明後日の新しい総括のなかに書きあげてゆく。60年前の本だが、案外と大事な気づきを与えてくれるのである。
※ 大衆活動:著)李光燦、訳)山口一郎、三一新書、1959年
mailto:agrito@mb.pikara.ne.jp