IZUMINO-izm 21年01月号より
第二砦をもう一度

「第二砦の人々」1)というドキュメンタリー映画がある。小川紳介監督が成田空港建設反対闘争の現場を撮った、いわゆる「三里塚シリーズ」中の一作。中でも本作は、最もスペクタクル性が高いことで知られている。描かれているのは1971年2月の第一次強制代執行の攻防。この闘いは、後の記録にはこう書かれている。

1970年12月26日、空港公団が申請した第一次の土地収用の裁決が下されました。(略)反対同盟は対象地に小屋を建て、バリケードを築いて「砦」を建設し、さらに地下壕を掘って立てこもる戦術を決定します。1971年2月22日には代執行が開始されますが、砦に立てこもった農民は、自らを鎖でバリケードや立木に縛りつけて抵抗しました。3月6日、地上部分の「砦」はすべて陥落し、千葉県は代執行の終了を宣言します(略)。総負傷者は重傷者43人を含む841人、逮捕者461人にのぼりました。2)
映画は、激突のど真ん中にカメラを置き、迫真の映像を撮ったのだった。私がこの映画と出会ったのは、たしか1979年10月。大学1年の頃だ。成田空港建設反対闘争のことは、知識としてぼんやりと知ってはいたものの、これほどの激しい闘争であったとは理解しておらず、映画を観て衝撃を受けた。抵抗する農民、支援者を機動隊が容赦なく排除していくシーンでは、衝撃と怒りで腹の底あたりが灼けるように熱く感じたことを今でもありありと覚えている。比喩ではなく、本当に熱いのだ。そして、その時たしか、後にかの村上春樹があるスピーチ3)で表明したのとほぼ同じ事を思ったはずだ。壁ではなく、卵の側に立ちたい、と。以後、それは政治や社会に対する私の基本的スタンスとなっている。

さて、その「第二砦の人々」が今月、県立美術館で上映されるそうだ4)。この映画を再び観て、41年前に観たときと私の中でどう印象が変わるのか、ぜひ試してみたいものだ。

もちろん、感染対策には万全の注意を払ってのことだが……。


1)第二砦の人々:小川紳介監督、小川プロダクション、1971年
2)土・くらし・空港:財)航空科学振興財団 歴史伝承委員会、2006年
3)村上春樹:エルサレム賞受賞スピーチ(2009/2/15)
 「高くて、固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵側に立つ」
4)高知県立美術館 冬の定期上映会「ATGとその時代」(2021/1/23-24)
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