IZUMINO-izm 21年02月号より
危機の帰結にかかわる12要因

「銃・病原菌・鉄」などの著書で有名なジャレド・ダイアモンドの「危機と人類」1)をさいきん読んだ。氏は、個人的危機克服の帰趨にかかわるとして心理療法分野で見出されてきたいくつもの要因を手掛かりに、国家的危機の帰結にかかわると考えられる12の要因を選び出し、7つの近代国家2)を例にとりながら、これら要因を用いて、本書で比較論的に考察を進めている。

12の要因とは下表の通りだが、一見してこれは病院のような組織にも応用できそうだと分かる。各々について、少しだけ補足しよう。

1.危機意識について。危機解決にあたって問題意識共有が必要なのは当り前じゃないかと思うかもしれないが、簡単でないことも多い。トップ自身が危機の存在から目を背けていることもある。

2.責任の受容について。コロナ禍だから仕方がないなどと言ったところでコロナ危機が解決しないように、解決の責任を自分たちで引き受けることが危機解決のスタートとなる。

3.「囲い」について。ダイアモンド博士は本書で「選択的変化」をキーワードとして用いている。何を変革し、何を変えないのか。組織としての意思決定が重要だ。 あと、6.や11.は、病院で言えば「設立理念」に相当すると考えたら良いだろうか。12.は、他院との競合状況などと解釈可能だ。


今年2021年は、東日本大震災から10年、また、当院開院から20年という節目の年にあたる。震災のような大災害はまさしく危機であり、事業継続の構想力(BCPなど)がまさに問われる。また、開院から20年ということは、人間でいえば「成人」にあたる。われわれは「大人になった」と自己評価できるのだろうか? 次の20年、30年とこの組織を存続させられるだけの基盤を、われわれは構築することができただろうか? 開院当時のメンバーは、次の世代にうまくバトンを渡せているのだろうか……?

危機や、危機からの回避、事業継続などについて考え出すと、切りがないくらい色んな想念が湧いてくる。だが、このように思考を巡らしてみることは、おそらく良いことなのだ。


1) ジャレド・ダイアモンド:危機と人類、日経ビジネス人文庫、2020年
2) 7つの国のひとつは日本。日本に対しては、全11章中2章が割り当てられている。1章は幕末〜明治期の日本、もう1章は現代の日本である。


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