IZUMINO-izm 21年07月号より
ニコチンパラドックス説のいかがわしさ

私が先月インターネットに載った記事を読んだ中で、いちばんの傑作はこれだろう。日本禁煙学会ホームページに掲載された「ニコチンパラドックス説はどこから来たのか」である。これは世界的医学雑誌BMJに載った取材記事の翻訳である。

記事の概要を述べると、こうである。
コロナパンデミックの初期に中国とフランスから、患者に喫煙者が少ないとする論文が出され、メディアの注目を浴びた。論文では「ニコチンを吸入すると新型コロナウイルス感染を効果的に防ぐことができる可能性がある」という「ニコチン仮説」の主張もなされていた。しかし、こうした主張はその後、完全に否定されており、むしろ喫煙は新型コロナによる死亡リスクを増加させることが明らかとなっている。
さらに、ニコチン仮説の提唱者たちが、タバコ産業から多額の資金を受け取っていながらそれを隠すというCOI違反を行っていた事実も明らかとなった。これら経緯から浮かび上がる構図とはすなわち、「タバコハームリダクション(THR)推進」である。記事は最後でこう述べる。

2021年、コロナパンデミックが世界中に吹き荒れている時にタバコ産業は、ニコチン製剤が、自分達が作り出した紙巻きタバコ依存症問題を解決する切り札であり、煙の出ないタバコ製品が、その解決のために必要であると政策決定者を説き伏せる活動を盛んに行っている。ニコチンが紙巻きタバコ依存と新型コロナ感染症収束の切り札になるいう口実でTHRを勧めているわけだ。
この記事では、THRについて、こう紹介している。
THRはもともと、ドラッグ治療から派生した手法で、禁煙できない紙巻きタバコ使用者に「低リスク製品」としての「燃焼によらない」ニコチン製品に乗り換えることを勧めるというものである。
わが国でも近年、製薬会社と医学研究者の癒着による研究不正がたびたび話題になっているが、タバコ産業も(以前から知られていることではあるが)なかなかのものだ。闇は深い。

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