IZUMINO-izm 21年08月号より
ヌスビト岩

先月3日に静岡県熱海市で発生した土石流は、1ヶ月後の8月3日時点で死者22名、行方不明者5名、家屋被害131棟を数える大惨事となった。ところがこの災害発生直後より不適切な盛り土の存在が明るみに出され、災害は単なる集中豪雨禍ではなく、人災の様相が濃くなっている。いや、もしかしたら、むしろ“犯罪”と呼ぶべき真相が今後浮かび上がってくるのかもしれない。それほど重大な事態なのに、五輪やコロナ禍の報道に埋もれてということなのか、マスコミでの扱いはずいぶん小さいように、私には感じられる。

で、それはともかく。土石流という現象自体は、実はけっこう頻繁に起こっている。2015〜2019年の5年間では、2018年の985件を筆頭として、全国で年平均464件の土石流等が起きており、地滑り・崖崩れも合わせると年平均1,850件に達するとされているが(国土交通省)、これはあくまでも家屋・施設等に被害が発生した土砂災害としてカウントされているものであり、山間部等で実際に起きているのはもっと多いはずである。

私にとって特に思い入れが深いのは、2004年に三嶺フスベヨリ谷奥の沢で起きた大規模な土石流である。写真1(略)は2008年にフスベヨリ谷最奥のヌスビト岩付近で撮ったものだが、土石流発生から4年経っても、辺りは流れてきた泥と岩と流木で荒涼たる風景が広がっていた。ここは三嶺登山のかつての高知県側メインルートなのだが、とても痛々しい姿だ。そして写真2(略)は今年撮ったもの。随分と緑色の部分が増えている。だが、その緑色の多くはシコクブシ(トリカブト)である。おそらくは鹿による食害が選択圧となり、食害に耐性のあるシコクブシの大群落ができているのだ。

しかし、それとて、山が風雨に晒されて形を変え、地域の生態系が遷移(サクセション)していくという、自然の悠々たる営みの一プロセスにすぎないのかもしれない。われわれヒトも、この自然の系(システム)の中で生きている。


参考)20210725山行

mailto:agrito@mb.pikara.ne.jp