開院の頃 (3)いずみの病院は2001年、四国勤労病院と梅ノ辻病院が統合してできた。2つの病院は元々別の出自を持ち、設立理念も異なっていた。だから、1つの病院に統合するにあたり、病院の基本理念をあらためて作り直す必要があった。いわゆるコンセプトワークである。そして、主要な理念的文書として3項目からなる「基本理念」、7項目からなる「医療基本方針」、8項目からなる「患者の権利章典*」を作成した。
防治会はもともと労災職業病の治療拠点として設立された経緯があり、「労働者の命を守る」という理念を持っていたので、新病院においても基本的な価値観は引き継がれた。また、いずみの病院開院当時は、日本医療機能評価機構により1997年に始まった病院機能評価を受審する病院が次第に増え、同評価が広く普及していった頃である。当院が開院してひとまず病院としてのかたちを整えたのち、その後の体制整備にあたり病院機能評価をひとつの指針として参照させていただいたこともあり、この病院機能評価が指し示す病院像が当院の目指す病院像にいくぶん影響を与えたようにも思う。当院は2004年6月に訪問審査を受審し、2005年3月に一回目の認定を受けた。
「職員への理念・基本方針の周知徹底」という病院機能評価の項目は、当時はいま以上に審査において重視されていたように思う。そのためもあって、当院でも当初は部署長会議などの場で「基本理念の唱和」などをやっていた。もっとも、実を言うと、私はこの頃から「唱和」は嫌いで、内心ナンセンスとさえ思っていた。具体的な実践と結びつけることなく、ただ題目だけ唱えても意味はあまりないだろう、と。
ただ、現在は、「唱和」どころか、「基本理念」「医療基本方針」「患者の権利章典」はその存在すら、ややもすると、忘れられがちなのではないか? 理念とは行動指針である。理念が忘れられるということは、行動指針が現場に息づいていないということだ。理念と乖離した職員の振るまいが野放しにされ、それを是正するための評価基準も職員間で共有されない。これでは具合が悪いと言わざるを得まい。いま一度、「職員への理念・基本方針の周知徹底」というテーマについて、考えてみる必要があるように思うが、どうだろう?
*患者の権利章典:開院時は6項目で、後に2項目追加された