IZUMINO-izm 24年4月号より
医療DX

今年の診療報酬改定で医療DX推進体制整備加算が新設された。医療DXとは医療分野におけるDX、すなわちデジタルトランスフォーメーションのことをいう。頭文字がなぜDXになるかというと、英語圏では接頭辞の「Trans」を同義語の「Cross」の略称「X」で表記する習慣があるからなのだとか。

Wikipediaによると、DXを2004年に初めに提唱したのはエリック・ストルターマンという人。彼の定義によれば、DXとは「情報技術の浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」ということらしい。だが、私の印象では、わが国でDXという言葉をさかんに見かけるようになったのはここ数年のこと。近年、政府はマイナンバーカードの普及推進になりふり構わず突き進んでいる。今年にはマイナ保険証推進のため、既存の保険証を廃止するのだという。こうした推進策の口実としてDXがスローガンとして掲げられ、政府の政策文書などではDXという文字がやたら目につくようになった。

こうした文脈のせいか、私の頭の中では、デジタルトランスフォーメーション → トランスフォーマー註1) → 変身 → ひみつのアッコちゃん註2) と連想が進み、DXというと、その呪文のような言葉を政府が唱えると魔法がかかり、何かよく分からんが素敵な社会が実現するという、魔法というより催眠術のようなイメージが湧き上がってくるのだ。

ま、それはともかくとして、医療DX推進体制整備加算の方も、施設基準を読んでみると、なかなかの怪しさである。とくに次の3基準、1)マイナ保険証利用率、2)電子処方箋発行体制、3)電カル情報共有サービス活用体制、である。1)の適用は今年10月から、2)は来年3月まで、3)は来年9月までの経過措置が定められている。現状で1)〜3)の要件を満たす医療機関はきわめて稀だろう。整備はまだこれからである。それなのに加算点数を設けるということは、これらはいま現在の病院のアウトカムや機能を評価するというよりも、これらアウトカムや機能の将来的な獲得を病院に目指させることで、医療DXという国策の推進を図ろうということに他ならない。つまり加算点数は、国策協力に対するインセンティブというわけだ。

このような国策遂行に医療保険財源を使うというのは如何なものだろう? かかる前のめりのマイナ推進は、まるで何かに取り憑かれたかのようだ。ひみつのアッコちゃんは、魔法を解除する時には「ラミパス ラミパス ルルル…」と唱える。こう唱えたら、みんな目が覚め、正気に戻るだろうか…?


註1)タカラトミーとハズブロによって展開されているメディア・フランチャイズ。変形ロボット玩具を基にしたアニメーション、コミック、映画で全世界的に展開されている。

註2)赤塚不二夫作のマンガ。アニメ化され、1969年から1970年にかけTV放映された。主人公のアッコちゃんがコンパクトミラーに向かって「テクマクマヤコン ○○にな〜れ」と呪文を唱えると変身する。


mailto:agrito@mb.pikara.ne.jp