第四次 震災ボランティアの報告

 
さや教会 白石英子
   【結論】

 結論から言いますと、被災地には、まだまだ深い傷が残っています。

 現地の方々も、解決できていない問題をいくつも抱えていらっしゃいます。

 でも、現地の方々や支えるボランティアの方々の明るさ、強さに触れるうちに、

 被災地に対して悲壮な祈りはもう必要ないと思いました。

 今必要なのは、復興を信じた、明るい力強いお祈りだと思います。

 

 今後は私も、まだ目に見ることはできませんが神様が考えていらっしゃる復興し

 た明るい未来を頭に描いて、被災地のことをお祈りしていきたいと思います。

 

【エマオのスタッフの方が再三おっしゃっていたこと】
 被災地の方々は日常生活を送られている。ボランティアはその日常生活にできるだけ添うように入っていくことをまず考えてほしい。
 「3日間しかいないからできるだけ役に立ちたい」という気持ちがどうしてもありますから、休み時間がまどろっこしく思えます。が、被災地の方々の生活や感情のペースを優先すること。休み時間には休むこと。
 なかなか難しいですが、自分ひとりではなく駅伝のようにリレーして作業をこなしていくと考えて、はやる気持ちをなだめました。


【現地状況】
 仙台市内は、環状線の高架によって津波が押し返され、一見無傷に見えます。しかし、環状線から海岸にかけては、津波によって全ての電柱が傾いており、その角度は海岸に近づくにつれて大きくなります。海岸近くは家の土台だけが残されて、あとは瓦礫で埋まっています。
 海岸から遠景に見える3機の仮設プラントからは、一日中瓦礫を燃やす煙が立ち上っています。
 瓦礫の処理で手一杯なため、一般ゴミの処理は後回しになっています。ボランティア中に出たゴミは持ち帰るように呼びかけがあります。私は持って出て、羽田空港で捨てました(東京都ありがとう…次回は家まで持ち帰れるように荷物を調整します…)。
 被災した土地の買い上げについては、現在の市価で行われるとのこと。本来の価格の3040%で先祖伝来の土地を手放すのもためらわれるし、そのまま住むこともできないという悩みもあります。教会から呼びかけて、民間企業や任意団体による土地活用などなにかないだろうかと思います。


【ワークレポート/七郷】

  ●私は七郷に差配されました。
 初日の午前中は人手が足りない農家のAさん宅で、ハウスの草むしり(間違えて小松菜をむしらないように注意しつつ)をしました。
 エマオのセンター長のけいじさん(牧師)が一緒で、緊張していた私にはラッキーなスタートでした。
 Aさんのお宅は流されて、そこにボランティアが協力してハウスを建て、小松菜やほうれん草を栽培。
 無農薬野菜をご自分で研究している農家です。
 同居されていたお子さんは、津波に人が流されて行くところをお孫さんが見てしまったこともあり、怖くて戻って来ることができません。そのため人手 が足りなくなっています。
 ちなみに、作業中にTPPの話題が出て、TPPで一番困るのはJAだろう、JAの言うなりにならず自分で考えている農家グループには市場が広がる チャンスとも言える、みたいな話もしました。
●初日の午後はBさん宅の障子紙をはがす作業。
 ご家族は誰もいませんでした。留守宅の鍵を預かって、エマオのスタッフが連日作業をしています。
 そんなに信頼されていることに驚きました。
2日目と3日目はCさん宅で建具や建材の泥を水洗いしました。
 一応きれいにしましたが現地スタッフによると、津波が運んだ塩水を含むヘドロに浸かった木材なので、乾くと白い汚れの筋が浮かんでくるだろうとのこと。そうなると紙やすりで全面を磨いて汚れを完全に除いてからニス塗りをすることになります。
 時間のかかる作業です。
 私と入れ違いのボランティアは、あるお宅で1枚の建具裏表を3日間磨き続けて、ニス塗りにはたどり着けなかったと残念そうでした。それを次のボラ ンティアが引き継ぎます。
 やすらかな生活を取り戻すには地道な手間がかかります。
 私が洗った建具は古いもので、昔はよくあったけれど今は生産していないガラスが入っていました。
 これらは元々使っていたものとは限りません。
 流されてしまったものの代わりに流れて来たものを流用することも多々あります。
 Cさん宅では4台の車が津波に流されました。家は1.5mくらいの津波に浸かり、震災直後に空き巣にも入られています。
 でも壮年のご主人も弟さんも明るくて、すごくボランティアを気遣って、「茶っこしよ」と休ませてくださいます。
●ワークは10時から15時まで。
 お宅によりますが、昼休みの他にワークが始まる前と終わる前にお茶して話をしていると、ワークの時間は3時間強 くらいです。でも、家の人が休もうと言ったら休むのがエマオの方針です。
 入っていく私たちは、いる間にできるだけのことをしたいと思いますが、受け入れるお宅にとっては日常生活。そのお宅のペースに合わせることも、人に寄り添うことであると。
 先達がそれを守ってきたおかげで、信頼してくださっていることを折々に感じました。人がどんどん変わっても「エマオから来た」と言えば信用してもらえます。
 とてもうれしくありがたく思いました。

【感謝】
 今回のボランティアを通し、人に寄り添うことについて考えをめぐらすことをはじめ、私自身が多くの貴重なものを得ることができました。

 被災地の方々に心から感謝致します。
 たった3日しかいないよそ者を受け入れ、暖かく接してくださってありがとうございました。明るく、強く、日々を生きていらっしゃる様子を尊敬致します。

 エマオのスタッフの方々に感謝します。
 専任スタッフの方々は、いずれも若く、クリスチャンホームの方、休学して関わっている方、「世界の旅人」を中断して参加している方など、多彩です。その生き方や考え方からも、多くの学びがありました。ありがとうございました。

 一緒にワークを行ったボランティアの方々に感謝します。
 同じ松山から参加した松山教会の佐竹さんが、若い方々から敬愛されている様子からも力を得ました。
 また、大学のボランティアサークルから来ている方、友人に勧められて来ている方、地元の方、何度も参加している方、いずれも、ここでしかお会いで きなかった方々で、非常に深い話を共有する機会もあり、私にとってかけがえのない出会いでした。ありがとうございました。

 最後になりましたが、準備の段階から、エマオのスタッフや先達の方々にアドバイスを頂き、また、寝袋や長靴をお借りしたり、本当に助かりました。 ありがとうございました。

 出発前から帰宅までお祈りをくださった、さや教会/篠浦牧師をはじめ、四国から祈りを持って送り出してくださった皆様に心から感謝致します。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

「エマオへの道・四国」
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