地域医療構想(ビジョン)のゆくえ先月の本欄で予告した通り、地域医療構想(ビジョン)について少し述べてみようと思う。本年、医療介護総合確保推進法という法律が成立し、全国の各都道府県で地域医療構想(ビジョン)というものが策定されることが決まった。厚労省の説明資料によると、キーワードは5つある。1)病床機能報告制度、2)地域医療構想(ビジョン)、3)協議の場、4)財政支援制度、5)知事の権限強化、の5つ。
1)は、各医療機関が病床機能情報を毎年都道府県知事に報告する制度のこと。この報告は、11月からすでに始まっている。担当者(当院では私)は面倒な集計作業を行わなければならない。こうして集めた詳細かつ膨大な情報をもとに、地域における医療提供体制の「あるべき姿」を描こうというのが2)の地域医療構想(ビジョン)。その策定のために、行政担当者だけでなく、医師会など医療提供側の代表者なども含めて「協議の場」を設けようというのが3)。4)の説明は省くが、ひとつ気になるのが5)。
医療機関の新規開設、増床や、急性期-慢性期といった機能の転換などに対し、こうした医療機関の挙動と地域医療構想(ビジョン)の計画とがミスマッチとなった場合、知事は医療機関側に計画の中止を求めたり、病床削減を求めたりすることができるとされている。また、県側の要請に従わない医療機関名を公表したり、補助金交付をやめたりもできる。たしかに、医療提供体制の「あるべき姿」たる計画の実現に実効性を持たせるためには多少の強制力が必要なのは道理ではある。だが、あからさまに権力を振りかざすやり方が、必ずしも「あるべき姿」に至る唯一の、うまいやり方とは言い切れないだろう。先月紹介した宇沢弘文氏が「社会的共通資本」について述べた1文を引いておこう。
社会的共通資本は、それぞれの分野における職業的専門家によって、専門的知見にもとづき、職業的規律にしたがって管理、運営されるものであるということである。社会的共通資本の管理、運営は決して、政府によって規定された基準ないしはルール、あるいは市場的基準にしたがっておこなわれるものではない。※となると、上記5つのキーワードのうち、3)の「協議の場」が決定的に重要であるということとなるだろう。ただ、いずれにせよ、とにもかくにも、医療提供体制の「あるべき姿」実現に向けた病床機能報告-地域医療構想(ビジョン)の制度は走り始めている。今後の動きは、要注目である。※宇沢弘文:社会的共通資本、岩波新書、2000年、p22-23