水平社宣言から100年日本初の人権宣言と呼ばれる全国水平社創立宣言(以下、宣言)は、いわゆる大正デモクラシー期にあたる1922年3月3日、京都の岡崎公会堂にて宣言、採択された。宣言は日本近代史上随一の名文である。もし私が「声に出して読みたい日本語」を編集するなら、宣言を筆頭に挙げるだろう。
文字数はわずか650字程度で、被差別部落解放という特定の課題をテーマとしながら、平易な言葉で「人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集団運動」の必然性を論じ、「心から人生の熱と光を願求礼賛する」と、普遍的な価値についてきわめて格調高く謳っている。
私が毎月書く「湧水」も宣言と概ね同じくらいの文字数だが、文章としていつもはるかに及ばない。宣言は憧れの名文だ。ちなみに2017年6月の本欄で「バビロン・システム」の歌詞中にある「rebel!」の語に対し、拙訳で「今こそ烙印を投げ返せ」と訳語をあてているが、これは実は宣言からの借用である。
なお、宣言の締めくくりの言葉、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」だが、この「人間」をどう読むか。かつて永六輔が宣言の起草者である西光万吉にこの読みを「じんかん」ではないかと尋ねたとき、西光は「いいんです、「にんげん」で、でも、ほんとうは「じんかん」なんです」と回答したという※1。「じんかん」は仏教用語で、「人に個別に光があたるんじゃなくて、人と人の間の万物すべてに光があたることで、人も物も平等になるという意味」とのことだそうだ※2。
※1,2)Wikipedia「水平社宣言」より