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「……で、その本は?」
それだけは確認しておきたくて、千晴の手にある本を指差した。
「ああ、これ? あの時は準備不足で、臣に痛い思いさせちゃったからさ。僕、勉強したんだ。で、これが一番の愛書。何だろうね、こっちに帰って来た時、この本だけ持って来れたみたい」
ああ、そう。で、その本を俺に貸してくれたというわけだ。
「何か思い出すかなぁって思って、臣に貸してみたんだけど。まさか、この本のせいで臣が向こうに行ったんだったとはね。道理で今までの臣が知らないわけだよ。あ、そういや、あの時、臣、この本持って向こうに来たよね」
こいつ。確信犯じゃねぇのか……。
「ちょっ、ちょっと……! 千晴、お前、何する気だよ?」
考えを巡らせていると、いつの間にか、ちゃっかり千晴がベッドに潜り込んで来ていた。
冗談じゃない。何をするつもりだ、お前。
「キスマークが付いてる。悔しいな」
「お、お前が付けたんだろうがっ!」
「ん? そうだけど」
だから、何するつもりだ。おい、噛み付くなって。
「今の僕の方が絶対に上手いからね」
内腿を撫で上げられると、ぞくり、と身体が反応した。
確かに上手そうだ。とか考えている場合ではなくて!
「あ、ほら、……が、学校行かなきゃ」
「今日は日曜だよ?」
さらりと却下されてしまう。
「い、一階に、親いるし。な?」
「おじさんとおばさんなら、もう出勤したよ? 大変だね、お医者様も」
ああ、そういや何か言ってたな。日曜ぐらい家に居やがれ。ま、仕方ないんだけど。
「や、で、でも、お前、ほら、昨日の今日、というか、」
段々声が上ずってくる。
だめだ。このままでは流されちまう。
「でも僕にとっては2年半だよ? もう待てないね」
ああ、そうか。
――って、俺、何、納得してんだ。
「……僕は臣が好きだよ?」
知ってるよ。
それが嬉しいから、困ってんだろ。
判ってるよ。
俺もお前が好きだよ。
でも、でも、だからといって、千晴のくせに俺を抱くのか。
「素直じゃないね、臣」
千晴がふうっと息を吐く。
「じゃあ、こうしよう。臣、この文字、読めるようになりたくない?」
何、だって……?
「それは……、」
魅力的なお誘いだ。思わず喉が鳴る。
「これは、古代魔法文字でね。向こうの世界でも読めるのは一握りしかいないんだよ。こっちの世界じゃ読めるの、僕だけじゃないかなぁ……」
悔しい。この俺が読めないなんて。
「教えたげようか?」
何て奴だ。千晴のくせに。
「1文字1文字に意味があるんだよー? 知りたい?」
あああ、もうだめだ。
知りたい。
知りたいったら知りたい。
「……知りたい」
「じゃ、SEX1回1文字で」
な、な、何てこと言うんだ、千晴のくせに!!
「千晴っ!」
「臣が素直じゃないから、理由を付けたげてるのに……」
千晴が膨れ面になる。
あああ、そうだよ。
お前に抱かれて、嫌じゃなかったよ。
俺の中でお前が感じてるの、嬉しかったよ。
はああ、と長い息を吐く。
もう、覚悟を決めるしかない。
「……判ったよ」
短く答えると、千晴の顔がぱあっと明るくなった。
やはり、こいつの笑顔を見るのは嬉しい。
ま、それでいいか。
ごそごそごそ……。
「じゃ、早速」
「な、何してんの?」
千晴の手がズボンを下げようとしてくる。
だから、今日は嫌だって言っただろ。
「今日はもう無理だって……」
「でも、間に合わないよー? 1日3回くらいしないとね」
何、だって……?
「5万語。覚悟してね」
くすくすくす。千晴が笑う。
溜め息とともに、俺は激しく脱力した。
「いい声出したら、倍にしてあげる」
とにもかくにも、千晴は嬉しそうだ。
判ってる。
俺もきっと笑ってる。
絶対教えてやんねぇけど、俺の額にだってちゃんと『千晴』と書いてあったんだから。
まいったな。
相思相愛か。
幸せじゃん。
もういいか。
「好きだぜ、千晴」
小さな声でそう呟く。
千晴がまた、笑った。
おしまい♪
このお話は、『異世界バトン』を頂いて生まれたお話です。
高瀬のお話の世界にトリップする……。
異世界トリップするならやっぱり『男子高校生』でしょう(笑)!
という高瀬の中の常識(笑)が、不幸な男子高校生、臣を誕生させました(^^)
お気づきの方もいらっしゃるかとは思いますが、このお話、高瀬が書いた唯一の現代モノです(現代モノかどうかは微妙ですが……)。臣のテンポが良く、悪ノリしながら楽しんで書かせてもらいましたvv
というわけで、これからもたま〜に書きたいカップリングですvv
また何処かでお会いできることを願っていますvv
お付き合い下さり、本当にありがとうございました!!
高瀬 鈴 拝