古典の力先々月、先月と、新書の老舗、講談社ブルーバックスについて書いた。他方、比較的新顔の新書・文庫シリーズの中で私が好んで読んでいるひとつは、2006年に創刊された光文社古典新訳文庫だ。「いま、息をしている言葉で」というキャッチフレーズの通り、世界で読みつがれている古典の名作をすべて新訳で提供するという、意欲的なシリーズである。
私がこれまで読んだのは、ロシア革命関連の3冊1)〜3)、ジョージ・オーウェルの評論集4)、サルトル生前最後の対談記録5)。の5冊。
1)は20世紀最高のルポルタージュとも呼ばれる作品で、ロシア10月革命(1917年)の見聞記。著者ジョン・リードの半生は映画「レッズ」で描かれた。ウォーレン・ベイティがリード役を演じた。
4)のジョージ・オーウェルはディストピア小説「1984年」などで知られるが、評論家としてもすぐれた仕事を残している。1945年、ナショナリズムについて彼は次のように書いている。
ナショナリストというのはもっぱら、あるいは大部分において、威信争いを物差しにして考える人々のことだ。(略)その思考は常に勝利や敗北、勝ち誇ることと辱めることに向かう。(略)ナショナリズムとは自己欺瞞によって強化された権力欲だ。まるで昨今の嫌韓・嫌中派のことを言っているようだ。また、古典新訳文庫の魅力のひとつは、訳者による解説だ。2)3)の解説などは、これ自体、革命論の堂々とした論文である。21世紀のこの時代に「社会主義革命について考えることの意味」を考える手がかりを与えてくれる。私は、感動すら覚えたものである。
5)も同様。本編を読んだあと解説を読み、もう一度本編を見返すと、はじめは気づかなかったサルトルの言葉の中に含まれる深い意味に気づかされる。 とにかく、同シリーズは、読みやすいのが良い。古典。それは古くて新しい。なかなか良いものである。
#以下、順に、著者名、書名、原書刊行年、訳者名。
1)ジョン・リード、世界を揺るがした10日間、1919、伊藤真
2)トロツキー、レーニン、1924、森田成也
3)トロツキー、ロシア革命とは何か ―― トロツキー革命論集、1906-1939、森田成也
4)ジョージ・オーウェル、あなたと原爆 ―― オーウェル評論集、1931-1949、秋元孝文
5)サルトル/レヴィ、いまこそ希望を、1980、海老坂武
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